ターミナルケアは、クライアントの旅立ちまでの時間をより質が高く、充実したものになるようにサポートしていくことを意味します。
ターミナル、つまり終末期において積極的な治療を行うのではなく、残された時間をより意味のあるものにしてほしいという考え方に基づくターミナルケアは、自分らしく最期を迎えることができるとして需要が高まりつつあります。
ターミナルケアを行う場所は緩和病棟や介護施設などが挙げられますが、最も落ち着ける場所として在宅でのターミナルケアを望む方が多く、訪問介護と訪問看護では連携してサービスを提供していく必要があります。
そこで今回は、ターミナルケアを提供していく際の訪問介護と訪問看護の役割、そして連携の大切さについてご紹介していきます。
訪問介護や訪問看護に携わっているアテンダントの方にとって分かりやすい内容となっていますので、どうぞ参考になさってくださいね。
在宅でのターミナルケア
ターミナルケアは、治療中心で自由のない終末期を過ごすのではなく、趣味を楽しんだり家族との時間を過ごすことによって笑顔で旅立つことを目標とする方に提供される介護サービスです。
もちろん症状の緩和や身体に感じる違和感や不快感に対処するための医療的ケアは行いますが、根本から病気や老衰に対して治療を行うことはしません。
病気を治すことよりも、精神的に落ち着いた状態で、満足感のなかで旅立てるようにサポートしていきます。
特に自宅は大切な家族と目一杯の時間を共に過ごすことができるほか、慣れ親しんだ空気や沢山の思い出を感じることができる場所で、ターミナルケアの場所としてぴったりであると言われています。
在宅のターミナルケアを提供するための条件
ターミナルケアを行うということは、延命を諦めることと同義になります。
そのため医師や医療スタッフがターミナルケアという選択肢を示すことはあっても、クライアントや家族の同意なしにターミナルケアへと切り替えることはできません。
またターミナルケアの期間中も、やはり家族としてクライアントの死を受け入れられずに延命措置への切り替えを希望されるご家族もいらっしゃいます。
死というデリケートな内容に関わってくることですので、クライアントと家族の意向は最優先にしながらも、臨機応変に対応する必要があります。
在宅ターミナルケアの提供
在宅でターミナルケアを行うときは、医療的なケアを訪問看護や訪問診療によってサポートし、日常生活で生じる困難を訪問介護がサポートしていきます。
また介護保険の利用にあたっては市区町村のケアマネージャーがクライアントの担当として、介護サービスの利用を管理します。
在宅でターミナルケアを行うときはこれらの人々が一丸となって、クライアントの終末期が充実したものになるような体制を築くのです。
特に訪問介護は在宅ターミナルケアを提供するチームのなかでも最もクライアントに長く接することになる可能性が高く、精神面でのケア、そして家族との協力関係も含めて大きな役割を担います。
また痛みや不快感を緩和し、より充実した終末期を支えるという点では、訪問看護のもつ意味も非常に大きいといえます。
在宅ターミナルケアで訪問介護が提供すること
クライアントが終末期を在宅で過ごすために、主に身体介護を中心に提供するのが訪問介護の役割です。
食事や排泄、入浴の介助を中心に、室内の移動介助や体位変換などを通して、クライアントが自立した生活を継続できるよう、サポートしていきます。
同時に容態の変化や体調の異変をいち早く察知し、訪問看護や訪問診療医に連絡を取ることも、訪問介護の重要な役目です。
クライアントの年齢や病状にもよりますが、死期が近づいてきた人間には。尿量や食事量の大幅な減少、意識の混濁、死前喘鳴やチアノーゼが出現するといった、特有の症状が出現する傾向にあります。
特に家族のなかには初めて身近な人の死を経験するという方も多いので、このような症状に対する知識をもつアテンダントとしては、家族に対して丁寧に情報共有を行い、悔いの残らない看取りになるよう、ターミナルケアをサポートしましょう。
また家族からの相談を受けてアドバイスするなど、クライアントだけでなく家族の肉体的・精神的負担を軽減することで、クライアントにとっても家族にとってもターミナルケアがよいものになるよう、サービスを提供していきます。
在宅ターミナルケアで訪問看護が提供すること
先ほどもご説明した通り、ターミナルケアを選択するということは積極的な治療を諦めるということです。
そのため在宅のターミナルケアにおいて本格的な医療行為は行われませんが、痛みの緩和や不快感の解消を目的として、例えば床ずれの処置や医療用麻酔の投与などは、終末期においても行われます。
医師の指示に基づいて医療的ケアを行うことで、クライアントが終末期をより後悔なく過ごすことができるようにサポートするのが、訪問看護の役割です。
さらに緊急時には医師の指示に基づいて看取りを行うこともあり、自宅という非医療機関で過ごすクライアントと家族にとって訪問看護は、命綱のような存在です。
日頃から家族による健康面や症状に関する相談を受けアドバイスを行うことも、訪問看護の重要な仕事です。
特に訪問介護のアテンダントから容態の変化について報告があった際はすみやかにクライアントの状況を確認し、家族にも今後予想される変化を説明するなど、業務内容は多岐にわたります。
訪問介護と訪問看護の連携で、自宅でのターミナルケアをより充実させよう
ターミナルケアを希望するクライアントから特に需要がある看取りの場所は、やはり自宅です。
思い出が詰まった場所で家族と共に過ごすことは、終末期を充実したものにしたいと考えるクライアントや家族にとって前向きに作用すると考えられます。
しかしながら家族の肉体的・精神的な負担を軽減するという観点からは、自宅でのターミナルケアには訪問介護と訪問看護の力を欠かすことができません。
訪問介護と訪問看護が協力し、お互いに積極的な情報共有を行うことで、クライアントの終末期を充実したものにするお手伝いをしていきましょう。
