定期巡回の4つのデメリットと解決法。定期巡回・随時対応型訪問介護看護の落とし穴とは?

社会福祉の分野では、「地域包括ケアシステム」の構築が行われ、高齢者だけではなく障害者・児童など幅広いクライアントが住み慣れた地域で生活ができるよう取り組みを行っています。

中でも24時間365日体制で在宅での介護や看護をサポートしてくれる「定期巡回サービス」は、地域包括ケアシステムの実現に向けて、重要な役割を担っています。

しかし、定期巡回サービスにはまだまだ解決しなければならない課題やデメリットが存在するのも事実。

今回は、定期巡回サービスのデメリットについてご紹介します。

目次

定期巡回とは

定期巡回サービスとは、1日に複数回、クライアントの自宅を訪問するサービスです。

定期巡回サービスに合わせて、随時対応型訪問介護看護施設が設けられています。24時間対応に加え、緊急時にも訪問をしてくれる施設です。

定期巡回サービスには、一体型事業所と連携型事業所があります。

一体型事業所は、訪問介護と訪問看護が1つの事業所で行われているため、訪問介護と訪問看護が連携をとりやすく、医療的視点が高いです。

一方、連携型事業所は、訪問介護事業所が他の訪問看護事業所と連携をしてサービス提供をしています。地域全体の情報を素早く入手・共有できるメリットがあります。

定期巡回サービスの1回の訪問は10〜20分程度であり、入浴・排泄・食事などの短時間で可能な身体介護をしてくれます。

なお、定期巡回サービスの対象者は、要介護1〜5を認定され、かつ事業所と同じ地域に住民票のあるクライアントです。

(参考)厚生労働省「定期巡回・随時対応サービスの創設」

定期巡回のデメリット

定期巡回サービスにはいくつかの解決しなければならないデメリットがあります。定期巡回サービスのデメリットを4つ紹介します。

アテンダント・環境の変化

デメリットの1つ目は、アテンダントや環境の変化です。

たとえば認定が、要支援2から要介護1へ変わった場合、定期巡回サービスが利用可能になります。

しかし定期巡回サービスを利用する場合、他のサービスと併用できません。今まで利用していたサービスでも解約が必要な場合があるのです。

事業所自体を変える必要がでてくるので、馴染みのあるアテンダントも交代になります。アテンダントの交代に伴い、介護環境が変化し、クライアントに負担がかかる可能性があります。

料金が割高になる可能性がある

定期巡回サービスは、利用方法によっては料金が割高になる可能性があります。

定期巡回サービスの料金は定額制です。要介護度・施設などによって異なりますが、月額5,000円〜30,000円程度が目安です。

サービスを利用する回数が少ないほど、1日の料金、つまり単価が高くなってしまいます。

多くの介護サービスを利用するクライアントにはおすすめですが、介護サービスの必要が少ないクライアントにとっては割高になってしまうこともあります。

事業所が限定される(一体型事業所)

一体型事業所のデメリットとして、クライアントが事業所と同じ地域の住民でなければならないことが挙げられます。クライアントの住民票が、一体型事業所の住所と同じ地域になければならないのです。

つまり、クライアントの自宅が一体型事業所の近隣にあっても、一体型事業所と同様の地域に住んでいなければ、事業所の管轄から外れていることとなります。

管轄外のクライアントにサービスは提供できないため、利用できる事業所が限定されます。

連携が難しい(連携型事業所)

連携型事業所のデメリットとして、訪問介護と訪問看護の連携が難しいことが挙げられます。

事業所が異なることで、情報共有の場や機会が減り、一体型事業所に比べ連携が難しくなります。事業所同士で連携がスムーズにできていないと、クライアントに必要な情報を迅速に収集できません。

適切なサービスや統一した関わりができず、クライアントに負担をかける可能性もあります。

定期巡回のデメリットを解決する方法

定期巡回サービスのデメリットを4つ紹介しました。

4つのデメリットは、解決する方法があるのでしょうか。

一体型事業所のデメリットである利用できる事業所の限定に関しては、住民票を移すしか解決策がありません。

しかし、他の3つのデメリットに関しては解決する方法があります。

(参考)厚生労働省「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」

多くの介護策を考える

アテンダント・環境変化に対する解決策は、多くの介護策を考えることです。

アテンダントとクライアントとの相性が合わなければ、お互いにとって気持ちの良いサービスにすることは難しいでしょう。

介護は人とひととの関わりなので、アテンダントとの相性や環境との相性を考える必要があります。

相性が合わなかった場合を想定し、他の事業所の定期巡回サービスをはじめ、定期巡回サービス以外の訪問サービス・施設入所なども選択肢に入れておきましょう。

単価・月額・年間の金額を考える

料金が割高になってしまうことに対しての解決策は、単価・月額・年間の料金を考えることです。

定期巡回サービスの料金は、一体型事業所と連携型事業所で算定方法が異なり、また訪問介護サービスを利用するかどうかによって異なります。

ここでは要介護度3のクライアントが一体型事業所で訪問看護サービスを受けない場合を例に挙げて料金単価を考えていきましょう。なお「自己負担額1割」「1単位10円」として計算しています。

定期巡回サービスの1人当たりの月額費用は168,830円です。自己負担が1割の場合、クライアントが支払う月額料金は16,883円になります。単純計算で1年間にかかる費用は、202,596円です。

次に単価を見ていきます。毎日サービスを利用する場合にかかる1日あたりの単価は、16,883円÷30日=約563円です。週3日でサービスを利用する場合は、16,883円÷(3日×4週間)=1407円です。週3日利用する場合は、毎日利用する場合と比べて1回あたり844円割高になります。

年間料金202,596円や1回あたりの差額844円を高いと捉えるかは人それぞれですが、思ったよりも費用の負担が少ないと考える人もいるでしょう。

老人ホームなどに入居すると月額10〜20万円ほどかかる場合もあります。単価・月額・年間の料金を考え、継続的な支払い・サービス利用が可能か、将来を見通して検討しましょう。 

(参考)厚生労働省「介護報酬の算定構造(R3.1.18)」

他事業所との連携方法を工夫する(連携型事業所)

連携型事業所でも連携方法を工夫することにより、スムーズな連携が可能になります。

地域包括ケアシステムでは、事業者同士の連携・多職種・多機関の連携が求められます。

連携の際に役立つ場として「サービス担当者会議」があります。サービス担当者会議は、近況の共有をはじめ、クライアントと共にサービス内容について考える場です。クライアントにサービスを提供しているアテンダントが揃い、事業所間の連携が図られます。

しかし、都合が合わなければ、会議に全員が出席することは難しいです。積極的な会議の開催に向け、オンライン会議も導入されはじめています。

また、会議のみではなく、リアルタイムで情報共有をしやすくするツールも開発されています。リアルタイムの多職種連携を可能にしたツールの1つが、MCS(メディカルケアステーション)です。非公開型のSNSで、各アテンダントまたはクライアントも含めてチャット上でコミュニケーションをとれます。

解決策を知って、住み慣れた地域で定期巡回サービスの利用を!

今回は、定期巡回サービスのデメリットとその解決方法をご紹介しました。

今後ますます高齢化が進み介護の需要が高まると考えられます。

クライアントがより安全で快適に老後の生活を送るためには、住み慣れた地域での生活支援が求められます。国は「地域包括ケアシステム」の構築のもと、定期巡回サービスの普及を進めています。。

定期巡回サービスは、住み慣れた地域で24時間365日介護を受けられる心強いサービス。利用にあたっては、今回ご紹介したデメリットとその解決策を知り、より安全で快適な生活にお役立てください。

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