訪問介護では、介護が必要なクライアントの自宅を訪れ、身体介護や生活援助などの介護サービスを提供します。
特に近年では「一番落ち着く自宅で、最期を迎えたい」「家族に囲まれて旅立ちたい」という想いから、在宅看取りを希望されるクライアントの方も多くいらっしゃり、訪問介護においても看取りのサポート需要が高まっている状況です。
看取り期のクライアントを初めて担当するアテンダントとしては、ヘルパーとしてどのような介護サービスを求められているのか不安に感じていたり、看取り期の立ち振る舞いが分からないと悩んでいたりする方も多いと思います。
そこで今回は、訪問介護で看取りを担当する予定の方や、看取りに向き合いたいと考えている方に向けて、ヘルパーとして留意しておきたいポイントをご紹介していきます。
在宅看取りとは
在宅看取りは、病気や老衰といった症状に対して積極的な治療行為を行う段階を越えたクライアントが旅立ちまでの期間を自宅で過ごすことです。
在宅看取りを選択すると、住み慣れた自宅で最期まで自分らしく過ごしながら、家族に囲まれて旅立つことができますので、近年では希望される方が非常に多くなっています。
家族にとってもクライアントへの想いを十分に伝える時間に恵まれますが、肉体的・精神的な負荷がかかりやすい看取りの形でもあります。
そのため在宅看取りにおいては、クライアントと家族の選択をサポートする目的として介護サービスを欠かすことができません。
看取りにおける訪問介護の役割
在宅看取りを希望するクライアントに対しては積極的な医療サービスを提供するのではなく、訪問看護や訪問診療によって、痛み止めの処方や床ずれのケアといった緩和ケアが中心になってきます。
訪問介護はそれらの医療的ケアを行うアテンダントとチームを組みます。
訪問介護事業所・ケアマネージャー・訪問診療の医師・訪問看護師そして家族で一丸となって、クライアントの希望する看取りに向けて、介護サービスを提供していきます。
看取りは2時間ルールの適用外
通常の訪問介護においては、同一内容の介護サービスを提供する際は間隔を2時間以上あけること、通称「2時間ルール」を守らなくては、介護報酬の対象になりません。
しかしながら訪問介護における看取りの需要は年々高まっており、また終末期という介護のサポートが大切な時期においてクライアントと家族を支える必要があることから、看取り期においては2時間ルールの適用外となります。
看取りにおいて必要量の介護サービスをしっかりと提供することで、看取り期のクライアントや家族をサポートしていきましょう。
ヘルパーとして看取りに向き合う
人は誰しもがいつかは旅立つと分かっていても、身近に死を経験したことがない場合、ヘルパーとして看取りに向き合うことに不安を感じる方も多くいらっしゃると思います。
またクライアント自身や家族も同様に、死に対する不安や看取り期の過ごし方に戸惑いを感じていらっしゃいます。
看取り期を担当するアテンダントとしては、看取り期のクライアントであっても「今を生きている方」という認識を忘れることなく、生きる上で必要な介護サービスを提供しようという意識が大切になってきます。
今現在目の前で生きて生活をしているクライアントが欲している身体介護や見守りなどを提供するという考え方を忘れずにいれば、ヘルパーとしてどのような声かけを行ったり、家族に寄り添えばいいのかが見えてくるはずです。
看取り期であっても基本的に提供するサービスは同じということを念頭におきながらも、看取り期特有の身体の変化に関してはしっかりと勉強し、緊急時のレギュレーションにおいても把握しておくようにしましょう。
看取り期の症状
看取り期から旅立ちの期間までは、クライアントの病状や年齢にもよりますが、少しずつ容態に変化が見られます。
最も分かりやすい変化は、食欲の不振や水分補給量の減少、また排尿の量と回数の変化です。
人間の生命を維持していくための根幹である栄養摂取と排泄に変化が生じ始めると、一歩ずつ旅立ちに向けて容態が悪化しているサインです。
身体介護を行う上では特に、食事と水分の量、そして排泄事情を把握しておくようにしましょう。
それ以外にも看取りが近づいたときに出現する独特のゼーゼーという呼吸音(死前喘鳴)や顔のチアノーゼなど、寿命が近づくと現れる特有の変化があります。
看取りの経験がある先輩ヘルパーなどは知識としてこういった情報に精通していますので、一度確認しておくとよいでしょう。
関係各所との連携
訪問介護を通して看取りのサポートを行うなかで、医療機関をはじめとする関係各所との連絡を欠かすことはできません。
特に緩和ケアを担当する訪問看護のアテンダントや、訪問診療を行う医療機関、そしてケアマネージャーとは緊急時のレギュレーションについて確認し、一つのチームとしての協力体制を整えておきましょう。
また緊急時対応については、家族との連携も非常に重要になります。
緊急時の意思決定者の確認や連絡先のチェックなど、何度か打ち合わせておくと安心です。
家族の不安を受け止める
アテンダントであるあなたも看取りと向き合うことに戸惑いを感じたように、クライアントの家族も大切な人が死を迎えようとしていることや、在宅介護の疲れなどから不安を感じています。
介護サービスの提供という形で物理的に家族の介護負担を軽減するのはもちろんのこと、家族からの相談に応じてアドバイスを行うなど、精神面でも家族をサポートしていきましょう。
看取りを全面的にサポートする訪問介護のヘルパー。クライアントと家族への寄り添いを
在宅での看取りを希望されているクライアントとその家族に対し、訪問介護のヘルパーとしてどのようなポイントに気を付けてサービスを提供していくべきかを解説してまいりました。
看取り期にいるクライアントであっても、訪問介護が提供する介護サービスの内容に大きな違いはありません。
ただし容態変化に関する知識と、クライアントや家族に対して寄り添いの気持ちを持ち、緊急時における連絡体制をしっかりと構築しておくことで、より悔いのない看取りのサポートができるでしょう。