【定期巡回サービス土屋】届いた声、その先に。― クライアント・ご家族の声から見えるケア ―|第3回

定期巡回サービス土屋粕屋 管理者・芦塚祐基

「終了」ではなく、「卒業」。― 暮らしの変化に寄り添う、定期巡回サービス土屋粕屋のケア ―

定期巡回サービス土屋の現場には、日々、クライアント(=利用者)やご家族、そして地域でともに支援に携わる方々から、さまざまな声が届いています。

その声の背景には、一人ひとりの暮らしや変化に向き合いながら、現場で積み重ねてきたケアがあります。

この企画では、クライアントやご家族、関係機関から届いた声をもとに、定期巡回サービス土屋の現場で育まれたケアを、管理者へのインタビューを通してご紹介します。

聞き手は、高齢福祉事業部 副部長・小川力信です。

第3回は、定期巡回サービス土屋粕屋の管理者・芦塚祐基さん。

今回、芦塚さんが聞かせてくれたのは、三つのエピソードでした。

支援を受け入れることへのためらい。
暮らしの中で少しずつ増えていった「できること」。
そして、サービスへの不安から始まったご家族との関係。

それぞれの場面で粕屋事業所が向き合ってきたのは、その時々のクライアントの暮らしに、どのような支援が必要なのかということでした。

定期巡回だからこそできることとは何か。
粕屋事業所の日々から、その答えをたどります。

聞き手:高齢福祉事業部 副部長 小川力信
話し手:定期巡回サービス土屋粕屋 管理者 芦塚祐基

第1章 「それなら、やってみようかな」~本人の思いを置き去りにしない支援~

小川
まず一つ目の事例から聞かせてください。

芦塚
はい。
ご自身の生活に強いこだわりを持っていらっしゃる方で、排泄に関する支援についても、当初は介助を受けることに抵抗を感じていらっしゃいました。

必要な支援ではありましたが、ご本人のプライドや羞恥心もあります。
ですから、こちらの都合で進めるのではなく、ケアマネジャーや計画作成責任者とも相談しながら、ご本人に少しずつ提案していきました。

小川
最初は、なかなか受け入れていただけなかったんですね。

芦塚
そうですね。
無理に進めることはせず、
「ケアマネジャーさんから、こういう提案がありますが、どうですか。」
というようにお伝えしながら、時間をかけて関わっていきました。

そうしていく中で、少しずつ、
「それなら、やってみようかな。」
というお気持ちになってくださったのではないかと思います。

小川
支援を始めてから、何か変化はありましたか。

芦塚
排泄に関する困りごとも、以前より少なくなったと報告を受けています。
また、この方には別の事業所の訪問看護も入っていました。

それまでは訪問看護の方々にも排泄に関する介助をしていただくことがあったのですが、私たちが介護の部分を担うことで、訪問看護の方からも負担が軽くなったというお声をいただきました。

小川
それは定期巡回の良さがよく表れている事例ですね。
クライアントだけではなく、一緒に支援する専門職の負担軽減にもつながっている。

それぞれが役割を担いながら連携できることも、定期巡回が入る意味の一つなのかもしれませんね。

芦塚
そう思います。
私たちができることと、訪問看護の方が担うことは違います。

それぞれが強みを生かして関わることで、クライアントだけではなく、ケアマネジャーや訪問看護の方との信頼にもつながっていくのではないかと思っています。

必要な支援だからといって、それをすぐに受け入れられるとは限りません。
そこには、その人がこれまで大切にしてきた暮らし方や、誰かの手を借りることへのためらいがあります。
だからこそ、急がず、無理強いせず、本人の思いを確かめながら提案を重ねる。

その先に生まれた「それなら、やってみようかな」という変化は、クライアントの暮らしだけでなく、ともに支援する専門職の負担軽減にもつながっていました。

第2章 「終了」ではなく、「卒業」~できないことを支え、できることを増やしていく~

小川
二つ目の事例をお願いします。

芦塚
この方は、入院によって身体機能が低下し、支援を始めた頃はほとんど寝たきりの状態でした。
それでもご自身でトイレへ行こうとされる中で転倒することもあり、日常生活にはさまざまな支援が必要な状況でした。

最初は1日3回、朝・昼・夕に訪問していました。

小川
そこから、かなり変わっていかれたんですよね。

芦塚
はい。
ケアマネジャーが作成したケアプランに沿って、計画作成責任者が支援計画を作成しています。
そのうえで、日々のご本人の様子や変化を共有し、関係者と連携しながら支援を続けていきました。

もちろん、私たちの支援だけで変化したわけではありません。
ご本人の意欲もありましたし、週に一度利用されていた通所リハビリなど、他の事業所の方々の支援もありました。

そうした関わりが重なる中で、少しずつご自身でできることが増えていったんです。

小川
具体的には、どんな変化があったのでしょうか。

芦塚
以前は排泄にも支援が必要でしたが、ほとんどご自身でトイレへ行けるようになりました。
食事についても、最初はこちらで簡単な準備をしていましたが、やがてご自身で起きて台所まで行き、簡単な調理であればできるようになりました。

小川
最初は1日3回だった訪問も変わったんですよね。

芦塚
はい。
ご本人ができることが増えていくにつれて、支援する時間も少しずつ短くなり、訪問回数も朝と夕の2回に減らしていきました。

その時々の状態に合わせて、支援する時間や回数を調整していけたことは、定期巡回だからこそできた関わり方の一つだと思います。

小川
そして最終的には、定期巡回の利用そのものが終了した。

芦塚
そうなんです。
その後、通所リハビリの利用を増やすことになり、ケアマネジャーからのお話を受けて、定期巡回の利用を終了することになりました。

ご本人からは、
「アテンダント(=介護職員)と会えなくなることが寂しくなるね。」
と言っていただきました。

終了してしまうことは、私たちとしても寂しいです。
その時、ケアマネジャーとも「終了というより、卒業ですね」とお話ししたんです。

ご本人のこれからの暮らしを考えれば、生活が少しずつ変わっていくお手伝いができたことは、私たちにとってもうれしいことでした。

支援が必要だから始まった、定期巡回。
けれど、支援を続けることそのものが目的ではありません。

できないことを支えながら、その人が持っている力や意欲を見つめ、できることが増えれば、支援の量も変えていく。
1日3回だった訪問は2回になり、やがて定期巡回そのものを離れる時が訪れました。

「終了」ではなく、「卒業」。

その言葉には、ご自身でできることが増えたことへの喜びと、次の暮らしへ進んでいくクライアントを見送る、粕屋事業所の思いが込められていました。

第3章 見えない時間まで、伝えていく ~日々の記録を、安心につなげる~

小川
三つ目の事例を聞かせてください。

芦塚
現在も定期巡回を利用してくださっている方です。

支援を始めた頃は、ご本人も、
「本当にこのサービスが自分に合っているんだろうか。」
という不安を感じていらっしゃったと聞いています。

離れて暮らすご家族からも、支援の手順などについて細かな確認をいただくことがありました。

小川
そこから関係が変わっていったきっかけは何だったのでしょうか。

芦塚
一つは、日々の記録だったと思います。
粕屋事業所では、スマケアを使って日々の支援を記録しています。

何時頃に訪問したのか、その時クライアントがどんな様子だったのか、どんな声かけをして、どんな反応があったのか。

体調に変化があれば、それに対してどのような対応をしたのか。
アテンダントが、そうした日々の気づきを細かく残してくれています。

小川
単に「訪問しました」という記録ではないんですね。

芦塚
そうですね。
私が粕屋事業所の管理者になってからも、アテンダントの記録を見ると、その日のご様子や、普段と少し違うところまで、本当に細かく残してくれています。

私は、これは粕屋事業所に受け継がれてきたものの一つではないかと思っています。

小川
そうした積み重ねの中で、ご本人にも変化がありましたか。

芦塚
はい。
支援を始めた頃は私たちの介入に不安を感じていらっしゃったそうですが、今では親しくされているアテンダントもいます。

そのアテンダントが訪問すると、いろいろなお話をしてくださり、笑顔で過ごされることもあるようです。
また、ご家族から具体的に評価のお言葉をいただいたわけではありませんが、以前のようなご不安やご指摘の連絡は少なくなっています。

日々の支援と記録を積み重ねてきたことが、安心につながっているのであればうれしいですね。

定期巡回の訪問は、短い時間で行われることもあります。
だからこそ、その短い時間に何を見て、何を感じ、どんな支援をしたのかを残す。

一つの記録だけで、信頼が生まれるわけではありません。
けれど、その日の小さな変化をアテンダントが見逃さず、言葉にして残していく。

その積み重ねが、次の支援へとつながり、クライアントの日々をチームで支える土台になっていきます。

そして、最初は不安のあった訪問が、いつしか会話と笑顔の生まれる時間へ。
丁寧な記録は、粕屋事業所のケアを支えるもう一つの大切な仕事でした。

第4章 暮らしが変われば、支援も変わる ~定期巡回サービス土屋粕屋が大切にしていること~

小川
三つの事例を聞いていると、粕屋事業所の特徴だけでなく、定期巡回というサービスそのものの良さも見えてきますね。

芦塚
そうですね。
定期巡回は、その方の状態に合わせて支援していけるところが一つの良さだと思っています。

今回お話しした方も、最初は1日3回訪問していましたが、ご自身でできることが増えていく中で2回に減っていきました。

短い時間でも、その時に必要なことを支援して、状態が変われば支援のあり方も変えていく。
そういう柔軟な関わり方ができることは、定期巡回の強みだと感じています。

小川
そして粕屋事業所には、一人ひとりの様子を細かく記録する文化もある。

芦塚
はい。
アテンダントのみんなが、日々クライアントをよく見てくれていると思います。

短い訪問だからこそ、その時に気づいたことをきちんと残して、次の支援につなげていくことは大切だと思っています。
一人のアテンダントだけで支えるのではなく、記録を通してみんなで情報を共有しながら、その方に必要な支援を考えていく。

これからも、そういうことを大切にしていきたいですね。

支援を受けることへのためらいに、急がず向き合う。
できることが増えれば、支援の量を変える。
短い訪問の中で見つけた変化を、次に関わる人へつないでいく。

今回の三つのエピソードから見えてきたのは、「支援すること」を固定しない、定期巡回サービス土屋粕屋のケアでした。

暮らしは、毎日少しずつ変わっていきます。
だから、支援も変わっていい。

必要な時にはそばにいて、自分でできるようになれば少し離れる。
そして、いつか支援そのものが必要なくなる時が来たなら、その別れを「卒業」と呼んで送り出す。

クライアントの暮らしに合わせて、支援のかたちを変えていく。
そこに、定期巡回というサービスの一つの価値がありました。

用語解説

スマケア……定期巡回サービス土屋で使用している介護記録システム。訪問時の支援内容やクライアントの状態などを記録・管理しています。

芦塚さんが管理者を務める「定期巡回サービス土屋 粕屋」については、以下よりご覧いただけます。

全国の定期巡回サービス土屋の取り組みについては、こちらをご覧ください。

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