定期巡回サービス土屋北九州管理者・本田朋久

最期まで、その人らしく暮らすために。-地域から選ばれる定期巡回サービス土屋北九州の理由-
住み慣れた自宅で、その人らしく暮らし続けたい。
それは、多くのクライアント(=利用者)やご家族が願うことです。
その願いを支える現場では、日々さまざまな出来事が生まれています。
この企画では、クライアント・ご家族から届いた声をもとに、定期巡回サービス土屋の現場で育まれたケアを、管理者へのインタビューを通してご紹介します。
聞き手は、高齢福祉事業部 副部長・小川力信です。
各事業所の管理者と対話を重ねながら、クライアントやご家族との関わり、多職種との連携、そして地域とのつながりの中で育まれた実践などをご紹介します。
第1回は、定期巡回サービス土屋北九州 管理者・本田朋久さんです。
聞き手:高齢福祉事業部 副部長 小川力信
話し手:定期巡回サービス土屋北九州 管理者 本田朋久
「定期巡回を利用して本当に良かった」

小川
本田さんがこれまでで一番印象に残っている、クライアントやご家族とのエピソードを教えていただけますか。
本田
一番最初に思い浮かぶのは、末期がんのクライアントのお看取りですね。
「定期巡回を利用して本当に良かった。」
そう言ってくださったのは、ご本人ではなく、ご家族でした。
そのクライアントには、およそ二〜三か月関わらせていただきました。
日に日に状態が変化していく中で、ご家族も「できる限り自宅で過ごさせてあげたい」という強い思いを持っておられました。
そんな中で一番うれしかったのは、アテンダント(=介護職員)への言葉でした。
「みんな本当に感じが良かった。」
そう言っていただけたんです。
その中でも、一人のアテンダントが声を掛けると、不思議なくらい反応されることがありました。
意識があまりはっきりしない状況でも、そのアテンダントの声が聞こえると、すっと目を開けて身体を動かされるんです。
でも本人は、
「僕はいつも通りしているだけなんですけどね。」
って、少し照れながら笑っていました。
小川
それは、ご家族にとっても忘れられない場面だったでしょうね。
一人のアテンダントだけではなく、北九州事業所の皆さん全員の人柄を評価してくださったというのも、とても印象的です。
本田
そうですね。
私たちも特別なことをしているつもりはないんです。
でも、一人ひとりがクライアントやご家族に寄り添おうという気持ちは、みんな同じだったと思います。
ご家族との「小さな約束」
本田さんが続けて語ってくれたのは、夜間の訪問で交わした、ご家族との小さな約束です。
本田
夜間も定期巡回で訪問していたんですが、ご家族には一つ願いがありました。
「できるだけ最後まで母の様子を見ていたい。」でも、眠っている時は起こしたくない。
そのお気持ちがすごく伝わってきたんです。
そこで、
「玄関の電気を合図にしましょう。」とご家族とアテンダントで話し合いました。
玄関の電気が消えていたら、その日は訪問しない。
そういう約束です。
小川
なるほど。
ご家族の時間を大切にしながら、必要な時にはいつでも駆けつけられるようにしたわけですね。
本田
はい。
ただ、私たちは毎回ご自宅の前までは行っていました。
“行かない”のではなく、家の前まで行って玄関の灯りを確認する。
灯りが消えていれば、そのまま静かに引き返します。
点いていれば、いつもどおり訪問する。毎日その繰り返しでした。
ご家族には、少しでも安心して過ごしていただきたかったんです。
制度やマニュアルに書かれている対応ではありません。
でも、ご家族にとって何が一番安心できるかを考えた時に、私たちにはその方法が一番自然でした。
やがて、そのクライアントはご自宅で最期の時を迎えられました。
その後、ご家族から掛けられた一言が、今も本田さんの心に残っています。
「定期巡回を利用して、本当に良かった。」
その言葉は、北九州事業所のアテンダント一人ひとりが積み重ねてきた支援を、ご家族が受け止めてくださった瞬間でもありました。
そして、この出来事は、やがて地域全体へ広がる信頼の始まりにもなっていきます。
「うちのアテンダント、本当にいいんですよ。」 ~管理者が何より誇りにしているもの~

お看取りのお話を振り返る中で、本田さんは何度もこう話しました。
「うちのアテンダント、本当にいいんですよ。」
その一言には、管理者としてアテンダント一人ひとりを信頼し、誇りに思う気持ちが自然とにじんでいました。
小川
先ほどのお話でも、ご家族はアテンダントの皆さんの対応をとても評価されていました。
本田さんは何度も「アテンダントがいい」とおっしゃっていますが、それは技術的なことですか。
それとも、人柄でしょうか。
本田
……やっぱり、人ですね。もちろん、知識や技術も大切です。
でも最後は、相手のことを思って行動できるかどうかだと思っています。
先ほどのお看取りのケースでも、特に印象に残っているアテンダントはいました。
ご本人がそのアテンダントの声によく反応される場面があって、ご家族もとても印象に残っていたそうです。
でも、ご家族が褒めてくださったのは、その人だけではありませんでした。
「皆さん、本当に感じがいいですね。」
そう言っていただけたことが、私は何よりうれしかったんです。
一人のアテンダントとの関わりが、ご本人やご家族の安心につながる。
そして、その安心をチーム全体で支えていく。
それが、私たち北九州事業所らしいケアなのかなと思っています。
本田さんのお話では、「私が」よりも、「アテンダントが」「みんなが」という言葉が何度も登場しました。
一人の成果としてではなく、チーム全体の取り組みとして語られていたことも印象的でした。
小川
そうした信頼関係があるからこそ、安心して現場を任せられるんですね。
本田
そうですね。本当に安心して任せています。
だからこそ、現場で起きたことは、できるだけみんなで共有したいと思っています。
「今日はこんな変化がありました。」
「こういう対応をしたら、こんな反応がありました。」
アテンダントが日々教えてくれる小さな変化は、次のケアを考える上で、とても大切なんです。
一人では気付けないことも、みんなで共有すれば見えてくる。
そういうチームでありたいと思っています。
「介護」だけでは終わらせない。 ~情報共有が地域との信頼を育てた~
アテンダント同士の情報共有を大切にする本田さんの視点は、やがて事業所の外へと広がっていきます。
小川
先ほど、訪問看護師さんや訪問診療スタッフの方から「どういう介護をしているんですか」と質問されたというお話がありました。
そこには、どのような経緯があったのでしょうか。
本田
土屋では、介護記録をスマケアで管理しています。
ただ、それだけでは介護現場で起きていることが、地域の皆さんには十分に伝わらないと感じていました。
医師や訪問看護、ケアマネジャーの皆さんも、それぞれの立場でクライアントを支える大切な仲間です。
だから、支援に必要な情報やクライアントの様子を、関係する医療・介護職の皆さんとも共有できるよう、多職種連携ツールであるMCSを通じて情報共有を行っていました。
例えば、
「今日は食事がしっかり摂れたこと。」
「いつもより表情が明るかったこと。」
「少し疲れが見られたこと。」
一つひとつは小さな変化です。
でも、その小さな変化が、医療や介護の判断につながることがあります。
そうした情報を日々共有していく中で、訪問看護師さんや訪問診療スタッフの方から、
「どういう介護をしているんですか。」
と声を掛けていただくようになりました。
介護の内容だけではなく、
「なぜ、その支援を選んだのか。」
「どんな思いで関わっているのか。」
そうしたことまで丁寧にお伝えしていくうちに、少しずつ信頼関係が生まれていきました。
小川
情報を共有したということだけではなく、介護に対する考え方まで共有されていたんですね。
本田
そうですね。同じクライアントを支える仲間ですから。
職種は違っても、目指していることは同じです。
だから、できるだけ同じ景色を見ながら支援したい。そんな思いで続けていました。
介護の現場で生まれた一つひとつの気付きや変化を、チームの中だけで終わらせず、多職種とも共有していく。
その積み重ねが、医師や訪問看護との信頼につながり、やがて地域全体とのつながりを育んでいきます。
そして、その信頼は思いがけない出会いを生みました。
訪問診療の医師からケアマネジャーへ――。
「あそこなら安心して任せられる。」
そんな言葉とともに、定期巡回サービス土屋北九州の名前が地域に少しずつ広がっていったのです。
小川
訪問看護師さんや訪問診療スタッフの方から「どういう介護をしているんですか」と声を掛けられたことが、一つのきっかけになったんですね。
本田
そうですね。
その後は、訪問診療の先生にも、介護の内容だけではなく、どういう考えで支援しているのかをお話しするようになりました。
すると、ある時からケアマネジャーさんへ、
「あそこはよく対応してくれるよ。」
と紹介してくださるようになったんです。
本当にありがたかったですね。
そのご縁をきっかけに、医師との信頼関係はケアマネジャーへと広がり、新たなご相談やご依頼へとつながっていきました。
「顔が見える関係」を大切にする

小川
地域との信頼関係は、どのように築いてこられたのでしょうか。
本田
地域との関係づくりは、一度お会いしたら終わりではないと思っています。
研修会へ参加したり、地域の集まりへ顔を出したり。
支援が終わった後も、「ありがとうございました。」とご挨拶に伺ったり。
そうした積み重ねが、相談しやすい関係につながっていくのではないでしょうか。
本田さんは、サービスを知っていただくこと以上に、地域の医療・介護職と同じ目線でクライアントを支える仲間として関係を築くことを大切にしていました。
信頼は、一日では生まれない

本田さんのお話に共通していたのは、日々の積み重ねを大切にしていることでした。
医師へ丁寧に情報を共有すること。
ケアマネジャーからの相談に誠実に向き合うこと。
支援が終われば感謝を伝えること。
そして、地域へ足を運び続けること。
その一つひとつが、「困ったら、まず土屋へ相談してみよう。」という信頼につながっていきました。
小川
ここまでお話を伺ってきましたが、本田さんがこれからも大切にしていきたいことを教えてください。
本田
これからも、一つひとつの支援を丁寧に続けていきたいですね。
クライアントに安心していただくこと。
ご家族にも安心していただくこと。
そして、医師や訪問看護、ケアマネジャーの皆さんにも、
「土屋なら相談してみよう。」
そう思っていただける存在でありたいと思っています。
私たちだけでクライアントの暮らしを支えることはできません。
それぞれの専門職が力を合わせ、相談しながら、一緒に支えていける関係を、これからも大切にしていきたいですね。
「うちのアテンダント、本当にいいんですよ。」
その言葉どおり、アテンダント一人ひとりを信頼し、チームでクライアントを支えること、多職種と連携すること、そして地域との関係を大切にすること。
その一つひとつの積み重ねが、定期巡回サービス土屋北九州が地域から信頼される土台となっています。
■用語解説
スマケア……定期巡回サービス土屋で使用している介護記録システム。訪問時の支援内容やクライアントの状態などを記録・管理しています。
MCS(Medical Care Station)……医療・介護に携わる関係者が、クライアントの情報を共有するための多職種連携ツールです。
本記事でご紹介した「定期巡回サービス土屋北九州」については、以下よりご覧いただけます。
全国の定期巡回サービス土屋の取り組みについては、こちらをご覧ください。