「私の介護の失敗談」定期巡回サービス土屋熊本 長谷川 伸

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「私の介護の失敗談」定期巡回サービス土屋熊本 長谷川 伸

初めまして、定期巡回サービス土屋熊本で管理者をしております長谷川と申します。

私は高齢者介護の現場を約20年以上経験しておりますが、本当に介護の仕事は奥が深く、人と人の繋がりの大切さをいつも勉強させていただいています。

今回は私が住宅型有料老人ホームで管理者として勤務していた時に「初心」を思い出させていただいたエピソードになります。

当時、私は住宅型有料老人ホームの管理者をしておりました。

「A様」女性は介護老人保健施設から住宅型有料老人ホームに入居された当日の出来事です。

いつもは入居される際に玄関でお出迎えして、ご挨拶を行いコミュニケーションを図ってから居室へ案内するのですが、この日は別の業務もあり、住宅型有料老人ホームに到着した際にご挨拶が出来ず、あとで居室に行って挨拶をしようと思っておりました。

11時頃、施設の玄関先で大きな音がしています。何事かと玄関まで行くとAさんが施設の自動扉をドンドン!と叩いて、「開けて~」と大きな声を出しています。

近くに介護スタッフはいますが、Aさんに声をかけてはAさんからは「うるさい」と怒られているような状態でした。

介護スタッフに状況を聞くと、施設についた時は特にお変わりなく、お部屋に案内してしばらくお部屋で過ごした後に介護スタッフに「急に玄関につれて行って」と頼まれたので玄関まで一緒に誘導したら急に自動ドアを叩きだしたとのことでした。

事前の情報では認知症は軽度の認知症はあるが、問題行動などは今までなかったと聞いていたAさんだった為、介護スタッフもびっくりしている様子でした。

介護スタッフに代わり、私がAさんに近寄り声をかけます。
「はやく、ドア開けて~」と言われ、私の話は聞いてもらえません…。

「外に出てどこに行きたいのですか?」と聞くと「家!」と一言。

Aさん宅は借家(アパート)だった為、介護老人保健施設から住宅型有料老人ホームに移ることが決まってから、契約は解約しています。

家を解約している状況を説明しても、話を聞いてもらえず「ドア開けて~」を続けています。

話を聞いていただけないAさんに困ってしまった私は思い切って、こんな提案をします!

「わかりました。家まで送りましょう!車を準備するので少しだけ待ってください!」

私の思い切った発言に介護スタッフたちは少しびっくりした表情をしています。

それに対してAさんは今日初めて見た「満面の笑顔」です。

社用車の助手席にAさんを乗せ、私は車を走らせます。事前の情報からAさんの以前の住所を把握していた私はAさんの以前の住所方面へ

Aさんは「ほんとうにありがとう」と先ほどとはまったくの別人です。

「やっと普通にコミュニケーションが取れる状況になってきた」と私は内心ほっとしていました。

ただこの先どうしようかな・・・(笑)
そんなことが脳裏に過ぎりながら、Aさんに「なぜ、自宅に戻りたいのですか?」と私は尋ねました。

Aさんから「自宅から施設(老人保健施設)に入ってから急にこっち(住宅型有料老人ホーム)に来たでしょう。こっちに入る前に一度、住み慣れた自宅を見たいと思って…」

私はさっきまで、「まったく話をきいてくれないAさん」と思っていた自分が恥ずかしくなりました。

「話を聞いていなかった」のは私たちだったと痛感させられました。

私は「家は解約しているから家はもう帰れないですよ」とAさんに話をしており、Aさんがなぜ家に帰りたいと思っているかをきちんと確認していなかったのです。

Aさんからすると「家を解約している」ことはきちんと理解されているが、私を含め他の介護士から「解約しているから」と同じことを繰り返し言われ、憤慨してしまったのです。

今日初めて会う人にそんな風に同じことを言われたら、怒ってしまうのも当然です。Aさんはただ、住み慣れた家をもう1回だけ見たいだけだったのです。

これが私の失敗談です。

高齢者介護に携わる上で、「相手の気持ち」になって考えていくことは「初心」だと理解しているつもりでしたが、長年業務を行っていく上でこの初心を忘れてしまっていたことを反省し、常に「初心」を心がけながら今後も相手の気持ちに寄り添って、しっかりと信頼関係を築きながら「住み慣れた自宅で暮らす」という自己実現を支援できるようスタッフ一同取り組んでいきます。

ちなみにAさんとはこの件がきっかけで信頼関係をしっかりと築くことが出来ました。私のことは「実の息子と思っている」まで他のスタッフに言っており、新人のスタッフが本当にAさんが私の母親と勘違いするほどでした(^^;)

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