定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、介護が必要な状態にあるクライアントであっても自宅での生活を継続することができるよう、地域全体で支えていく地域包括ケアシステムの中心にあるサービスです。
日常生活に対する介助を24時間365日提供する定期巡回サービス、年中無休で緊急時の相談対応や訪問を行う随時応対サービスと随時訪問サービス、そして看護師が療養上の世話や診療補助を行う訪問看護サービスから構成されています。
特に最近では定期巡回の利用を検討された方から「一体型事業所が少ない」「一体型の事業所を探したが、隣町のものは使用できないと言われた」との問い合わせを頂戴することがとても多くなっています。
そこで今回は、なぜ一体型の定期巡回事業所が少ないのか、大きな違いはあるのかなどを中心にご紹介していきます。
地域包括ケアシステムの仕組み
人口に占める高齢者の比率が増加し続ける日本において、介護施設の不足や介護サービスの提供体制に関する課題は山積みとなっています。
そこで厚生労働省は2003年より地域包括ケアシステムを促進することによって、クライアントに介護を提供する場所を介護施設から各家庭にまで広げ、介護を必要とするクライアントが自宅で必要な介護サービスを利用することができる制度づくりに取り組んでいます。
地域によって異なる、介護への課題
日本の超高齢化社会において重要な地域包括ケアシステムですが、介護に関わる課題は例えば単身世代が多い都心の人口過多地域と、家族で暮らす世帯が多い地方都市、また島しょ部に代表される人口過疎地域では、大きく異なります。
そのため地域包括ケアシステムの整備・運用は、各地方自治体に裁量が与えられています。
基本的には市区町村単位で介護に関わる課題点を整理し、それぞれで考案した課題解決策を実行しています。
地域包括ケアシステムの制限
地域包括ケアシステムは、先にご紹介した通りそれぞれの自治体の管轄下にあります。
そのため地域密着型のサービスを利用したいクライアントの居住地と、利用を希望する事業所の所在地が異なる場合は利用することができなくなっています。
例外として住民票の住所と異なる所在地にある事業所のサービス利用が認められるのは、介護施設に入所し、住民票も当該施設に異動した「住所地特例者」に限られます。
地域包括ケアシステムの中心的サービス
自宅に暮らす要介護クライアントを24時間365日の体制でサポートする定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、地域包括ケアシステムで提供する地域密着型サービスのなかでも中心的な存在です。
定期巡回サービス・随時対応サービス・随時訪問サービス・訪問看護サービスから構成されていますが、この4つのサービス全てを1つの事業所が担当する事業所を「一体型」、訪問看護事業所に訪問看護サービスをお願いして、残りの3つのサービスを行う事業所を「連携型」と呼んでいます。
一体型事業所の特徴
一体型事業所は、ひとつの事業所で介護に関わるサービスと看護に関わるサービスを全て提供することが可能です。
ホームヘルパーも訪問看護士も同じ事業所に所属するアテンダントですので、情報共有が行いやすく、密に連携が図れるというメリットがあります。
クライアントの様子で気になる点があっても、すぐにホームヘルパーから看護師へ、もしくは看護師からホームヘルパーへ迅速に情報を伝えることが可能になります。
一方で一体型事業所はある程度事業規模が大きくなってきますので、比較的人口が多い中心都市や、都市圏にしか事業所が展開されていないケースが多いというデメリットが挙げられます。
そのため冒頭でご紹介した通り「一体型事業所が見つからない」という問い合わせにつながりやすくなっているのです。
連携型には、どんな注意ポイントがあるの?
一体型の定期巡回事業所が居住地域にない場合は、連携型の事業所が利用の候補となります。
訪問看護事業所との連携で定期巡回・随時対応型訪問介護看護を提供する連携型の定期巡回事業所には、どのような特徴があるのでしょうか。
介護と看護の連携に関して、大きな心配はないケースがほとんど
地域にある訪問看護事業所と連携してサービスを提供する連携型事業所では、定期巡回サービス・随時対応サービス・随時訪問サービスを提供しています。
介護分野に専門性をもって対応しているため、高いサービスの質が特徴です。
同じく高い専門性をもつ訪問看護事業所と連携することで、地域全体の感染症情報医療状況、介護保険に関する情報が集まりやすく、地域全体の介護と看護に関する情報の共有が可能となっています。
事業所の担当者同士で定期的に、必要に応じて随時的に情報共有を行う体制が整備されていますので、クライアントの健康に直結する情報はもちろんのこと、一体型事業所と同様にしっかりとした近況や様子の共有がなされますので、心配はありません。
これまで訪問看護を利用していた方は、同じ訪問看護事業所の継続利用も可能
「要介護度の進行やライフスタイルの変化により定期巡回・随時対応型訪問介護看護が必要となったけれど、これまでに使っていた訪問看護事業所を継続したい」という方は、連携型事業所の利用がおすすめです。
現在利用している訪問看護事業所が提携している連携型事業所がある場合は、訪問看護の事業所を変更せずとも定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービスが利用できる可能性があります。
年齢や認知症症状の進行が進むと、新しいアテンダントとの交流や慣れ親しんだサービスを変更することに対する不安も感じやすくなります。
連携型の事業所を利用することでクライアントの心理的な負担が軽減することもありますので、積極的に連携型の利用を検討してみましょう。
定期巡回は一体型だけじゃない!一体型と連携型を比較して、利用する定期巡回を選ぼう。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護が柱となっている新しい介護のカタチである地域包括ケアシステムと、定期巡回サービスを提供する一体型事業所のご紹介をしてまいりました。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護を提供する事業所は、一体型であっても連携型であっても地域包括ケアシステムの1つとして、地域に暮らす方々への質の高いサービスを提供しています。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスの利用を希望される場合は、改めて一体型と連携型の特徴を理解して、自宅と同じ自治体に所在する事業所の中から問い合わせを行いましょう。