自宅で暮らしたいと希望する要介護のクライアントがもつ意思を尊重するために役立つ介護保険サービスが、定期巡回・随時対応型訪問介護看護です。
24時間365日いつでもホームヘルパーが介護のために訪問したり、緊急時に問い合わせに応対したりする体制を整えているため、安心して自宅での介護生活を続けることができます。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は介護保険制度によって提供されるサービスになりますので、利用したサービスの単位数などから算出された介護報酬のうち、基本的には1割が自己負担としてクライアントに請求されます。
今回の記事では、介護保険制度を利用した場合に発行される明細書の中でも疑問が多く寄せられている「定期巡回総合マネジメント体制加算」の項目を中心にご紹介していきます。
介護報酬とは
介護保険制度では、地方自治体の認可を受けた介護事業所がクライアントに対して介護保険サービスを提供した際に、その対価として介護報酬を支払うことになります。
特別にクライアントの収入が多いケースなどを除くと、介護報酬のうち9割は介護保険制度から支払われ、残りの1割はクライアントの自己負担によって賄われます。
介護報酬は、提供されるサービスごとに厚生労働大臣が基準を定めています。
介護事業所のサービス提供体制やクライアントの介護度・居住地域などに応じて、介護報酬は加算・減算されます。
また介護保険制度は2000年に運用がスタートして以降、介護を取り巻く社会情勢の変化や今後の状況予測に基づき、3年に1度のペースで介護報酬の改定を行っています。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護の介護報酬
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は休日や祝日、また深夜や早朝であっても年中無休で利用することのできる、居宅型の介護保険サービスの1つです。
介護保険制度のなかでも珍しいことに、サービスの利用内容や頻度に関わらず、月額の固定制でサービスを提供しています。
それぞれのクライアントの介護度や訪問看護サービスの利用有無などによって差がありますが、8,000単位から25,000単位の間で基本単位は定められています。
この基本単位に対して各種加減算を行うことで算出された総単位数に対して、厚生労働省が定めた地域区分をかけ合わせることによって算定されるのが、介護報酬ということになります。
特に各種加減算は施設のサービス提供体制などによって細かい項目がいくつも定められており、クライアントが実際に利用した事業所の質によって不公平感が生じないような仕組みになっています。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護の自己負担額
介護報酬が算出されると、所得に応じて1割から3割の自己負担が請求されます。
一般的な場合は1割の自己負担金となり、1割負担の場合に考えられる定期巡回・随時対応型訪問介護看護の自己負担額は6,000円から30,000円程度とされています。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護の大きな特徴の一つとして、深夜・早朝加算がなく、またケアプランに定められた範囲内であれば一日に何回サービスを受けても介護報酬は一定となっています。
定期巡回総合マネジメント体制加算とは
定期巡回・随時対応型訪問介護看護に対して定められた加算のうち、クライアントの状況に応じて適宜介護計画の見直を行っていること、また地域との交流を図っていることを条件に
算定することが認められた加算を、定期巡回総合マネジメント体制加算といいます。
定期巡回総合マネジメント体制加算の算定要件
厚生労働省によって定められた定期巡回総合マネジメント体制加算を算定することのできる要件は、以下の通りです。
- クライアントの心身の状況や家族も含めた周辺環境の変化を考慮して、適宜介護計画の見直しを行っていること。また計画の見直しは、計画作成責任者や看護師などが共同して行っていること。
- 事業所が所在する地域にある病院や介護老人保健施設などに対して、定期巡回の具体的なサービス内容などについて、適切に情報提供を行っていること。
定期巡回総合マネジメント体制加算の単位数
定期巡回総合マネジメント体制加算の算定要件を満たした場合、定期巡回事業所は1カ月あたり1,000単位を加算することができます。
つまり定期巡回総合マネジメント体制加算が認められている事業所を利用するということは、定期的に介護プランの見直しをしっかりと行ってもらうことができる事業所を利用していることを意味し、毎月あたりの自己負担金が100円程度増えるということになります。
定期巡回総合マネジメント体制加算の注意点
定期巡回総合マネジメント体制加算については、クライアント側もアテンダント側もいくつか留意しておくべきポイントがあります。
しっかりと事前に確認しておきましょう。
区分支給限度基準額について
介護保険制度では介護認定のレベルによって、利用することのできる介護保険制度の量に上限が求められています。
それぞれの介護度で認められたある一定のレベルまでは介護保険制度の適用となって自己負担額は1割しか請求されないのですが、この上限である区分支給限度基準額を超過した分に関しては全額自己負担となってしまいます。
そのため利用するサービスごとの基本単位数はとても重要な数字になってくるのですが、要件を満たすと毎月1,000単位の加算となる定期巡回総合マネジメント体制加算の項目に関しては、区分支給限度基準額に含まれません。
つまり定期巡回総合マネジメント体制加算が認められた事業所を利用する場合も、認められていない事業所を利用する場合も、自己負担1割で利用することのできるサービス量には違いがないということになります。
適宜の見直しに関して
定期巡回総合マネジメント体制加算の要件として適宜介護計画の見直しを行うということになっていますが、これは特別に改まった会議などを開催する必要はありません。
毎日の業務の中でかかりつけ医や看護師を含むアテンダントなどから寄せられる意見を把握した上で、提供するサービスの内容を調整することができていれば、要件を満たすことになります。
現場や医師の声に耳を傾け、クライアントファーストな介護プランの作成を行っていきましょう。
定期巡回総合マネジメント体制加算を確認して、介護報酬をチェックしよう
定期巡回総合マネジメント体制加算の詳細について、介護保険制度の仕組みとともにご紹介いたしました。
介護保険制度は必要なクライアントに広くサービスを提供できるよう、細かく介護報酬に関するルールが定められています。
明細書の項目で分からない点があった時には、ケアマネージャーなどに相談を行い、適切な介護保険制度の利用を心がけましょう。