早朝や深夜、また休日や祝日に関わらず、自宅で暮らす要介護認定を受けたクライアントに対して介護と医療が連携したサービスを提供しているのが、定期巡回・随時対応型訪問介護看護です。
2012年度よりスタートした比較的新しい介護保険サービスのため、「親の介護で定期巡回の利用を勧められたけど、どういうサービスかよく分からない」「定期巡回を利用しているけれど、明細書の見方がよく分からない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、定期巡回を利用する上で疑問の多い加算項目のなかでも、定期巡回緊急時訪問看護加算を中心にご紹介していきます。
定期巡回を利用中の方や定期巡回の利用を検討している方、そして「定期巡回についてもっと知りたい」とお考えのアテンダントの方は必見の内容となっています。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護の料金体系
定期巡回は、介護保険制度のなかでも地域包括ケアシステムの中心的なサービスです。
地域に密着して24時間365日体制で介護と医療が連携したサービスを提供していますが、サービスの利用時間や利用頻度に関わらず固定料金で利用することができますので、家計に優しいという特徴があります。
定期巡回を利用した際の介護報酬は「(基本単位数±各種加減算)×地域区分」という計算式で求めることができ、算出された介護報酬のうち一般的には1割が自己負担額となります。
基本単位数はクライアントの要介護度や利用する事業所の形態、訪問看護利用の有無などによって細かく定められていますので、一人ひとりのクライアントによって自己負担額は大きく異なりますが、6,000円から30,000円前後という費用感になっています。
定期巡回の単位に関わる加減算
定期巡回の介護報酬を算出する場合には、まず基本単位数に対して加算や減算を行う必要があります。
介護保険制度における加算は、ある特定のサービスを提供する体制が整っていたり、職員の体制が整っていたりする施設に対して行われます。
高い介護保険サービスを提供することができると認められた項目に対して、ひと月あたり30単位から1,000単位程度の加算項目が定められています。
反対に減算は、クライアントが通所サービスを利用した日数や、事業所と同一の建物に住むクライアントに対してサービスが提供された場合に差し引かれる項目になります。
利用した事業所の質や併用したサービスとの兼ね合いで、各々のクライアントに不公平感がないよう介護報酬を調整していく役割を、各種の加減算が担っているのです。
定期巡回緊急時訪問看護加算とは
定期巡回緊急時訪問看護加算は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の単位に関わる加算の一種です。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護のなかでも、訪問看護サービスに関わる加算になってきますので、詳しく確認していきましょう。
訪問看護サービスとは
定期巡回・随時対応型訪問介護看護を構成する4サービスのうち訪問看護サービスは、医療とクライアントをつなぐ重要な役割を担っています。
訪問看護サービスを担当するのは看護師もしくは准看護師です。
訪問看護サービスはクライアントのかかりつけ医の指示によって行われ、看護師もしくは准看護師はクライアントの自宅を訪問して、健康状態の確認や持病の悪化防止措置、そして療養生活に関するクライアントや家族からの相談対応を行います。
具体的にはバイタルチェック・リハビリテーションの指示・点滴や注射などの医療処置・服薬の管理・痛み止めの処置・主治医やケアマネージャー、歯科医などとの連絡調整・看取りケアが挙げられます。
定期巡回の看取り
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は介護が必要と認定されていても、自宅で自分らしく暮らし続けたいと願っているクライアントからのニーズが非常に高いサービスです。
そのため必然的に自宅における看取りの役割も、定期巡回・随時対応型訪問介護看護が担うことになります。
特に看取りの際は、医療従事者である看護師は准看護師である訪問看護を担当するアテンダントが担当することが多くなっています。
訪問看護サービスの利用
訪問看護サービスは、医師の指示によって行われるものです。
そのため医師から「医療的に必要な処置・経過観察等がない」と判断されている場合には、訪問看護サービスの定期利用はせずに、定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用することも可能です。
ただし訪問看護サービスを定期利用していない場合でも、看護師もしくは准看護師による定期面談(アセスメント)は必ず必要です。
訪問看護サービスの提供体制
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は地方自治体から認可を受けた定期巡回事業所が提供するサービスですが、定期巡回事業所には2種類が存在します。
1つ目は、定期巡回に関わる4サービス全てを担当する一体型事業所です。
1つの事業所のなかに定期巡回を担当するホームヘルパーと、訪問看護を担当する看護師もしくは准看護師が在籍しており、強いチームワークでサービスを提供します。
そしてもう1つは、連携型と呼ばれる事業所です。
連携型の場合は、別々の定期巡回事業所と訪問看護事業所がタッグを組んでサービスを提供していくことになります。
専門性の高い知識をもつそれぞれの事業所が連携することで、クライアントにとっても安心して利用できるというメリットがあります。
定期巡回緊急時訪問看護加算の提供体制
定期巡回緊急時訪問看護加算は、緊急時のクライアントや家族からの問い合わせに対して、看護師や准看護師が応答し、必要な場合は訪問できる体制が整っている施設が加算することのできる項目になります。
ただしサービスの提供体制が整っているだけでは加算することができず、必ず加算に対するクライアントや家族の同意が必要になります。
一体型の場合は該当の定期巡回事業所が、連携型の場合は訪問看護事業所が加算の対象となります。
- 一体型……緊急時訪問看護加算/サービスコード763100/315単位(月ごと)
- 連携型(指定訪問看護ステーションの場合)……緊急時訪問看護加算Ⅰ/サービスコード133100/574単位(月ごと)
- 連携型(医療機関の場合)……緊急時訪問看護加算Ⅱ/サービスコード133200/315単位(月ごと)
意味が分かると納得!定期巡回緊急時訪問看護加算の項目を確認しよう
介護保険制度における、介護報酬を決定するために必要な加算と減算の仕組み、そして定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用中のクライアントや家族から質問されることが多い緊急時訪問看護加算についてご紹介いたしました。
定期巡回緊急時訪問看護加算は、もしもの時や万が一のときに医療従事者に対する緊急の問い合わせができる体制に対する加算です。
ただしクライアントや家族の同意なく加算することはできませんので、注意しておきましょう。