訪問介護が支える終末期。終末期におけるアテンダントの役割とは?

高齢者の人口比率が増え続けるなかで、介護における考え方は大きく変化していきました。

昭和以前の日本では「要介護認定を受けたクライアントを、自宅で家族が介護する」「認知症を発症したので、介護施設に入所して最期を迎える」という考え方が主流でした。

2000年の介護保険制度制定や2006年の地域密着型サービス創設などのムーブメントを受けた現在では、クライアントの意志を尊重し、在宅介護や自宅で迎える最期に関しての需要が高まりつつあります。

今回の記事では終末期を迎えたクライアントに対して、訪問介護と訪問介護に携わるアテンダントが担う役割についてご紹介していきます。

訪問介護への就職や転職が気になっている方、また訪問介護に従事中で初めて終末期のクライアントを担当するアテンダントの方は、必見です。

目次

訪問介護とは

訪問介護は、介護が必要な身体機能の衰えや認知機能の異常があると認定されていても「自宅で自分らしく暮したい」「住み慣れた自宅以外の場所に移りたくない」と考えるクライアントに対して提供される介護サービスです。

資格をもつアテンダント(旧ホームヘルパー)がクライアントの自宅を直接訪問して、自宅での生活を継続するために必要な身体介護・生活援助・移動介助といった介護サービスを提供します。

また訪問看護や医師、ケアマネージャーと連携して、クライアントの生活を包括的に支えてくための介護サービスとなっています。

終末期を迎えたクライアント

認知症や高齢を理由に介護生活を送っているクライアントは、やがて「終末期」を迎えます。

終末期はクライアントの症状や容態の改善が見込めず、いわゆる助かる見込みのない状況のことで、具体的には余命がおよそ3カ月程度の場合を指します。

ただし終末期という概念に関してはクライアント本人や家族の意向が最優先されますので、助かる見込みがないと判断されていても継続的な治療や延命治療を望む場合は、終末期とは表現しません。

最期に向かって緩やかに、そして穏やかに自宅で生活したいと考えるクライアントに対して提供されるのが、終末期の訪問介護です。

終末期に対する訪問介護

「終末期を迎えていても、自宅に暮らし続けたい」「終末期を宣告されたからこそ、自宅に帰りたい」と考えるクライアントに対して、訪問介護は定期的にクライアントの自宅を訪問し、自宅での自立した生活を継続するために必要なサービスを提供します。

また緊急時にはかかりつけ医をはじめとする関係各所に連絡を取ることができる体制を整え、クライアント自身や家族が安心して過ごすことができるよう、旅立ちをサポートするための手はずも整えていきます。

終末期に訪問介護で提供するサービス①身体介護

終末期以外にも訪問介護で提供している身体介護は、自宅で生活を続けるクライアントにとって終末期においても重要なサービスです。

食事や排泄(おむつ交換を含む)の介助のほか、清潔保持を目的とした入浴もしくは清拭、さらにそれらに伴う着替えなども担当します。

特に終末期においては、死が近づくと尿量が減る傾向にあり、クライアントの容態変化と同様に重要な健康管理の指標となります。

24時間以内に死が迫っている場合は排尿がなくなるなどといった特徴もありますので、特に排泄の介助やおむつ交換は終末期の訪問介護において、重要な役割を担っています。

終末期に訪問介護で提供するサービス②肉体の緩和ケアと体位変換

訪問介護の身体介護に含まれる体位変換は、特に終末期に大事なケアの一つです。

終末期を迎えたクライアントは今まで以上に姿勢の保持が難しくなり、身体のあちこちに痛みを感じることが多いです。

そのため医師の指示がある場合は痛み止めを適宜服用したり、ベッドの上や車いす上での体位を調節するなど、少しでも苦痛を和らげて、穏やかな気持ちで過ごすことのできるようにクライアントを見守っていきます。

終末期に訪問介護で提供するサービス③コミュニケーション

訪問介護は限られた時間でクライアントを訪問し、介護サービスの提供を行う必要がありますが、終末期において訪問介護中にクライアントと積極的にコミュニケーションを取ることで、クライアントの精神面での苦痛緩和につながります。

アテンダントにとっては「また今度」と思うような内容であっても、クライアントにとって「また今度」の機会が永遠に訪れないケースも珍しくありません。

終末期を迎えたクライアントとは特に丁寧なコミュニケーションを意識することが大切です。

終末期に訪問介護で提供するサービス④家族に対するケア

終末期のクライアントが安心できるコミュニケーションを提欲していると同時に、クライアントの家族も不安に苛まれており、アテンダントとのコミュニケーションを欲しています。

特に初めて終末期の家族と相対する家族の場合、旅立ちの時に対する不安な気持ちや介護疲れから、メンタル面での落ち込みが見られることが多々あります。

いつも以上に家族と対話する時間を意識して確保し、クライアントの家族にも寄り添った介護を提供していきましょう。

終末期に訪問介護で提供するサービス⑤エンゼルケア

エンゼルケアは、死亡直後に提供するクライアントへの死後処置です。

エンゼルケアを行うにあたって特別な資格はなく、医療従事者以外でも担当することができますので、訪問介護事業所によってはこのエンゼルケアを提供可能な体制を整えています。

エンゼルケアを行う際は、ご遺体をきれいに整えることで故人の尊厳を守ること、家族にとって気持ちよく故人を送り出すことのできる環境を整えることなどを意識することが大切です。

また一般的には死後2〜3時間以内にエンゼルケアに取り掛かることが一つの目安となっていますので、事前に関係各所と相談し、いざという時のためのシミュレーションを行っておくと安心です。

訪問介護の提供で、自宅での穏やかな終末期を支えよう

高齢者や認知症のクライアントにとって、死は身近に迫ったライフイベントの一つです。

訪問介護では、死を迎えるその時まで自宅で暮したいというクライアントの意思を尊重し、思い残すことのないように旅立ちを迎えられるようサポートしていきます。

訪問介護のメリットを活かし、一人ひとりのクライアントと丁寧に向き合いながら、終末期に寄り添っていきましょう。

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