介護が必要と認定されたクライアントが、自分らしく自宅で自立した生活を継続できるようにサポートするための制度が、訪問介護です。
介護施設に入所したり、病院などに入院することなく頑張っているクライアントを支えていくために重要となってくる社会保険制度ですが、その必要性は旅立ちの時を自宅で向かえようとしているクライアントにとっても非常に大きなものとなります。
今回の記事では、訪問介護で働きたいと考えている方や、訪問介護への転職が気になっている方に向けて、訪問介護が行う看取りの流れをご紹介していきます。
訪問介護で提供しているサービス
訪問介護は、ホームヘルパーや介護職員初任者研修などの資格を持つアテンダントがクライアントの自宅を訪問し、身体介護・生活援助を中心としたサービスの提供を行います。
訪問介護の身体介護
訪問介護で提供する身体介護は、まず排泄や入浴といった行為に対する補助、それに伴う着替えの手伝いなどが代表的です。
特に終末期の看取りが必要なクライアントになってくると、排泄や入浴もおむつの交換や清拭といった形でのサービス提供が増えてきます。
また食事に関しても通常食ではなく流動食を必要とする傾向にありますので、誤嚥などには十分気を付けながら食事の介助を行います。
その他には床ずれを防ぐための体位変換や、内服薬が処方されている場合は服用のサポートを行ったりします。
訪問介護の生活援助
訪問介護では、クライアントが日常生活を継続するために必要な暮しにまつわる様々な家事を手伝います。
一般的には料理や掃除・洗濯、生活に必要な日用品の買い物、薬の受け取りに代表されるように、「身体介護のように直接身体に触れるわけではない」けれど「生きていくためにサポートが必要」な部分に対して提供するサービスです。
旅立ちを控えたクライアントに対しては先ほどご紹介した基本的な生活援助のほか、クライアントや家族に対して安心感を与えたり、コミュニケーションを介して不安を取り除くような時間を提供することも必要になってきます。
訪問介護の通院介助
訪問介護で提供することができるサービスのなかには、通院の介助が含まれています。
介護保険制度上は通院等乗降介助という項目で提供されるサービスで、通院に伴う荷物の準備から車への乗り降り、診療科までの案内などをサポートします。
訪問介護で看取りを迎える流れ
訪問介護を利用して、自宅で看取りを迎えたいと考えているクライアントに対しては、どのような流れで旅立ちまでをサポートするのでしょうか。
一般的な看取りの流れをご紹介します。
訪問介護で看取りを迎える流れ①医療と介護の連携
クライアントや家族から「自宅で最期を迎えたい。そのために訪問介護を利用したい」との意志がケアマネージャーに相談されると、ケアマネージャーは看取りケアを組み込んだケアプランの作成を行います。
医師や訪問看護とも連携し、訪問介護で看取りケアを行うためのチームとして、改めてサービス提供の方針や現在のクライアントの状況を共有していきます。
クライアントや家族との、認識のズレに要注意
看取りはあくまで自宅からの旅立ちを、人間としての尊厳を維持したまま行うことができるようにサポートする介護サービスです。
延命措置や医療行為は基本的に行いませんので、病院で入院中に受けるような手厚い医療サービスなどは提供されません。
看取りのケアをスタートさせる前には必ず、延命措置を目的とした介護サービスではないことと、訪問介護を利用する上での注意点(2時間ルールや、利用上限など)について説明し、クライアント本人や家族との認識のズレがないようにしておきましょう。
訪問介護で看取りを迎える流れ②月単位の容態変化
余命が数ヶ月と予想されている時期は、ひと月ごとに体調や身体機能に異変を感じやすい時期です。
具体的に感じる異変としては、食事量の低下やお通じがスムーズにいかなくなる、免疫力が低下するなどといったものが代表的です。
急な容態悪化のようなリスクは少なく、苦痛さえ和らげることができれば比較的穏やかに過ごすことが可能な時期にあたります。
ただし緊急時を想定して24時間体制の連絡体制を確立しておくことや、介護・看護・医療・地域(ケアマネージャー)が一体となって、症状変化の共通理解や、変化に伴うケアプランの変更などをしっかりと把握しておきましょう。
訪問介護で看取りを迎える流れ③週単位の容態変化
旅立ちの時が近づいてくると、これまで以上にクライアントの容態が頻繁に変化するようになります。
食事や入浴、着替えといった日常生活動作を表す数値であるADL(Activities of Daily Living)が急激に下がり、呼吸が浅くなる、倦怠感が強くなる、食事に関心がなくなるといった様子が見受けられ、アテンダントも家族も「辛そう」というネガティブな気持ちから精神的に感情が揺れ動いてしまうことも多々あります。
特に家族とは、急変に備えた連絡の手順を再度確認したり、看取りの場所を再度打ち合わせたりすると同時に、メンタル面でのサポートを行っていくことが大事です。
訪問介護で看取りを迎える流れ④看取り期
看取り期に突入すると日ごとにクライアントの意識レベルやADLが低下し、クライアントはぼーっと過ごす時間が長くなり、うつらうつらしてばかりになるなど、傾眠傾向となります。
尿量も減少し、手足が冷たくなりはじめるなどの症状も見受けられますので、急変連絡に備えてアテンダント同士はもちろんのこと、関係各所とより頻繁に連絡を取り合う必要があります。
さらに旅立ちが24時間以内に迫っているサインとしては、以下のような容態変化が代表的です。
- 唾液などを飲み込むことができなくなり、息を吐くときにごろごろと音がする(死前喘鳴)
- 排尿がなくなる
- 手足の先が紫色になり、顔面にチアノーゼが出る
- 四肢や顔をばたばたさせる
上記のような様子が見受けられた場合は、家族の誰かが常に付き添えるように連絡を取り、その時に備える必要が高いといえます。
アテンダントとしても落ち着いて、その時に備えた準備を今一度確認しておきましょう。
訪問介護の看取りを通して、旅立ちのお手伝いを
高齢の方や認知症の方に介護サービスを提供していくなかで、天寿を全うするお別れの時は必ずやってきます。
看取りを希望されるクライアントに対しても落ち着いてサービスを提供し、良い看取りにつなげていくことで、クライアントの尊厳が守られるのはもちろんのこと、家族の方にとっても遺恨の残らないお別れの時を迎えることができます。
改めて訪問介護で看取りを提供する際の流れを確認し、よりよい介護サービスを提供していきましょう。