定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、自宅での生活を継続したいと望むクライアントに対して提供される、介護と看護が一体となった社会福祉サービスです。
24時間体制の介護と見守りサービスが提供されており、月額の固定制で利用することができますので、クライアントやその家族が安心して日常生活を送ることができると、近年特にニーズが高まっています。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護を提供しているのは、自治体によって認可された介護事業所です。
定期巡回サービスを提供している事業所の中でも、特に定められた要件を満たしている事業所に対しては「サービス提供体制強化加算」を基本単位に加算し、介護報酬に計上することができます。
今回の記事では定期巡回サービス提供体制強化加算が創設された理由と、加算が認められる要件についてご紹介していきます。
定期巡回におけるサービス提供体制強化加算とは
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、2012年4月に創設された地域密着型の介護保険サービスです。
介護が必要と認定されたクライアントであっても住み慣れた自宅や地域での暮らしを継続することができるよう、24時間体制での定期巡回サービス・万が一の時にも安心できる随時対応サービスと随時訪問サービス・医療との橋渡しになる訪問看護サービスから構成されています。
自治体から認可された定期巡回事業所のうち、より質の高い定期巡回・随時対応型訪問介護看護を評価する加算が、サービス提供体制強化加算です。
クライアントにとってより満足度の高い定期巡回サービスを提供する定期巡回事業所が増え、勤務するアテンダントも十分な知識を糧としてサービスを提供することができる環境が整うことによって、よりよい社会を実現することを目指しています。
2021年度の介護報酬改定によって、定期巡回のサービス提供体制強化加算は3段階に分類され、1ヵ月あたりそれぞれ750単位・640単位・350単位の加算が認められます。
定期巡回のサービス提供体制強化加算に関する要件
定期巡回におけるサービス提供体制強化加算は、要件によって3段階の加算が認められています。
まずはサービス提供体制強化加算にあたって、どの加算でも共通の要件となるのが以下の通りです。
- アテンダント全員に対して一人ずつ研修計画を作成し、研修を実施もしくは実施を予定していること
- クライアントに関する情報やサービス提供に際しての留意事項の伝達を行い、アテンダントの技術指導を目的とした会議をおおむね月1回程度、定期的に開催していること
- 事業所に勤務する全てのアテンダントに対し、健康診断等を定期的に実施していること
上記の要件を全て満たしたうえで、以下にご紹介するような一つひとつの加算に関係する要件を満たすことによって、定期巡回におけるサービス提供体制強化加算が認められます。
加算Ⅰ:750単位の加算対象
加算Ⅰは、先ほどご紹介した要件に加えて、以下の要件のどちらかを満たしている事業所が対象になります。
加算Ⅰに適合している事業所の場合、1ヵ月あたり750単位の加算が認められます。
- 事業所に勤務するアテンダントの総数のうち、介護福祉士が60%以上
- 当該事業所に勤務するアテンダントのうち、勤続年数10年以上の介護福祉士が25%以上
介護福祉士は、介護で唯一の国家資格となっています。
高い知識量と豊富な経験をもつアテンダントのみが保持できる国家資格となっていますので、介護福祉士の資格保持者が一定数以上、もしくは長い勤続年数を誇る介護福祉士が一定数以上在籍していることで、事業所全体の定期巡回サービスの質が高く保たれる環境にあると認められます。
加算Ⅱ:640単位の加算対象
加算Ⅱは、サービス提供体制強化加算の前提要件を満たした上で、以下のどちらかの要件に該当する事業所に認められる加算です。
1ヵ月あたり640単位の加算となります。
- 事業所に勤務するアテンダントの総数のうち、介護福祉士が40%以上
- 事業所に勤務するアテンダントの総数のうち、介護福祉士と実務者研修修了者および介護職員基礎研修課程修了者を合計した総数が60%以上
介護に関する研修である実務者研修もしくは介護職員基礎研修課程を修了しているアテンダントが一定数在籍していることで認められる加算です。
どちらの研修も修了までには4ヵ月前後を要しますが、近年では通信講座の展開も充実しています。
研修の修了をサポートする制度がある事業所や、研修の受講にあたって補助金などを支給している事業所もあります。
加算Ⅲ:350単位の加算対象
先述のサービス提供体制強化加算前提要件を満たした上で、以下の要件のいずれかを満たしていると1ヵ月あたり350単位が加算される加算Ⅲの対象になります。
- 事業所に勤務するアテンダントの総数のうち、介護福祉士が30%以上
- 事業所に勤務するアテンダントの総数のうち、介護福祉士と実務者研修修了者および介護職員基礎研修課程修了者を合計した総数が50%以上
- 定期巡回事業所に勤務するアテンダントの総数のうち、常勤職員が60%以上
- 定期巡回事業所に勤務するアテンダントの総数のうち、勤続年数7年以上のアテンダントが30%
加算Ⅰ・加算Ⅱと比較すると、資格を保有しているアテンダントの割合や、勤続年数の長いアテンダントの割合がやや低く設定されているものの、定期巡回サービスの質を高めるためにはとても重要な要件となっています。
定期巡回のサービス提供体制強化加算の留意点
前項でご紹介したサービス提供体制強化加算を計算するなかでは、いくつか留意しておくべき点があります。
しっかりと確認しておかないと不正受給の対象となるケースもありますので、今一度注意しておきましょう。
アテンダントの割合の算出方法
アテンダントの総数と、総数に占める対象者の割合を算出する際は、常勤換算方法をもちいます。
具体的には前年度の4月から2月までの11ヶ月間における平均値を基準として、毎年職員の割合に関する加算算定できるかどうかを決定しています。
前年度の職員の割合から大きな変化があって、加算に関する要件を満たせなくなってしまった場合は、できるだけ速やかに申請を取り下げなくてはいけません。
前年の実績が11ヵ月未満の事業所の場合
前年度の4月から2月にわたる11ヵ月間の実績で計算する職員割合ですが、開設から1年未満の事業所であるなどして前年度実績が十分ではない場合は、届出日を含む前3ヶ月を基準として常勤換算方法による算出であっても加算を申請することができます。
ただし届出の提出から3ヵ月間は、届出時と同じ人員体制を継続して維持する必要があります。
万が一加算の対象となるアテンダントが不足してしまった場合は、早急な届出が必要です。
アテンダントの勤続年数
アテンダントの勤続年数に関しては、前月の末日の時点で所定の勤務年数に達しているかどうかが判断の基準となります。
例えば7月31日の時点で勤続年数10年以上を満たすことになる介護福祉士がアテンダントの総数の25%以上となる場合、8月より加算Ⅰの対象です。
資格合格と勤続年数の関係性
例えば加算Ⅰの要件にある「勤続年数10年以上の介護福祉士」という文言ですが、これは「介護福祉士の資格に合格してから10年以上の勤続」という意味ではありません。
勤続10年以上であれば介護福祉士の資格合格からの年数は不問となります。
定期巡回のサービス提供体制強化加算は全部で3種類!要件をしっかりと確認しよう
定期巡回・随時対応型訪問介護看護におけるサービス提供体制強化加算について詳しくご紹介いたしました。
定期巡回事業所の提供するサービスの質向上を目的に創設されたサービス提供体制強化加算は3段階に区分されており、それぞれ細かく要件が定められています。
万が一サービス提供体制強化加算の要件を満たしていないのに加算を受給してしまった場合は不正受給とみなされてしまうケースもあります。
毎月職員の構成を見直し、適切に届け出るよう心がけましょう。