ターミナルケアを通した旅立ちのお手伝い。介護士に求められる役割とは。

ターミナルケアは、終末期を迎えたクライアントが充実した日々を過ごすことができるよう、介護と看護、そして医療が連携して提供するサービスです。

特に近年では住み慣れた自宅で最期の時を家族と共に過ごしたいという希望から、在宅でのターミナルケアを選択される方が多くいらっしゃいます。

在宅でのターミナルケアを望むクライアントや家族に対して、介護士はどのような役割を担うのでしょうか。

今回の記事では在宅でのターミナルケアについて、介護士の役割という観点から解説していきます。

これから介護業界や訪問介護で働きたいと考えている方、訪問介護現場でのステップアップを目指すアテンダントの方は参考になさってくださいね。

目次

ターミナルケアの概念

ターミナルケアは、終末期に提供される医療的なケアを中心にしたサービスです。

医療的なケアといっても年齢を重ねて衰えてしまった身体機能を改善したり、現在罹患している病気の完治を目指したりするわけではありません。

ターミナルケアで提供される医療的ケアは、老衰や病気によって生じる苦痛や不快感を和らげることで、クライアントが自分らしく悔いのない時間を過ごすことを目的としています。

つまりターミナルケアを選択するということは延命治療を諦めるということを意味しますので、クライアントや家族の同意がないままにターミナルケアが提供されることはありません。

在宅ターミナルケアを提供するチーム

在宅でターミナルケアを希望するクライアントに対しては、医療・看護・介護が一つのチームとして連携体制をとり、サービスの提供にあたります。

特に医療面を担当する訪問診療医と、医師の指示に基づいて必要な医療行為をおこなう訪問看護のアテンダントが、ターミナルケアの中心になります。

その他にも自治体の代表としてクライアントと必要なサービスを結ぶ架け橋となるケアマネージャーもチームの一員です。

介護士もクライアントの身体面と精神面を支えながら、在宅ターミナルケアの提供をサポートしていく役割を担います。

在宅ターミナルケアにおける介護士の役割①身体の介助

介護士が在宅ターミナルケアにおいて担う役割のうち、基本となってくるのが身体の介助です。

終末期を迎えて固形物の飲み込みに時間がかかるクライアントの食事をサポートしたり、座位の保持や室内での移動が難しくなってきたクライアントの身体を支えたり、介護士としての知識を活かしてクライアントの日常そサポートしていきます。

また死期が身近に迫っている兆候として、尿量の減少や排尿回数の減少といった傾向も見られます。

身体介護を通してこのような異変に気付いた場合は、速やかに訪問看護や訪問診療医に連絡をとることも介護士の役割です。

他にも終末期特有の容態変化として、床ずれが挙げられます。

床ずれは主に寝たきりのクライアントに出現しやすい症状で、身体とベッドがこすれ続けることによって生じる傷の一種です。

床ずれが生じるとその部分から雑菌が体内に入って周辺組織を破壊、最悪のケースでは死に直結するような症状へと変化していく可能性があります。

そのため床ずれの兆候に気付いたらすぐに訪問看護と連携を取り、適切な処置をお願いしましょう。

在宅ターミナルケアにおける介護士の役割②メンタルヘルスの管理

死からは誰一人として逃れることができませんが「自分には治療法が残されていない」「自分はもうすぐ死ぬ」いう状態を経験したことのある方は、多くありません。

そのため自宅でのターミナルケアを選択したものの、死に対する恐怖や不安から、情緒が安定しないクライアントもたくさんいらっしゃいます。

介護士はクライアントの精神面にも寄り添い、落ち着いて終末期を送ることができるように、サポートしていきます。

具体的には話し相手・相談相手となること、ベッドの周りに思い出の品を飾ってこころが安らぐ環境を整えること、家族との団らんの時間を持つことができるようにサポートすること等が挙げられます。

またクライアントだけでなく、大切な人がゆっくりと死に向かっている現実に向き合い切れず、精神的な辛さを抱えてしまっているクライアントのご家族も大勢いらっしゃいます。

クライアントの家族に対して真摯に向き合い、安心してその時を迎えることができるようにメンタル的なサポートをしていくことも、在宅ターミナルケアにおける介護士の重要な役割です。

在宅ターミナルケアにおける介護士の役割③緊急時の対応

ターミナルケアの終わりには、クライアントの旅立ちが待っています。

旅立ちが近づいてきた兆候に気付き、家族をはじめとする関係各所に連絡をとることも、介護士の重要な役割の一つです。

例えば死前喘鳴のゼイゼイという音や、顔に出現するチアノーゼなどは、死が24時間以内に迫りつつあるサインです。

このような知識をクライアントの家族に共有して緊急時に備えることや、訪問看護に対して緊急の連絡を行うことで、混乱のない旅立ちをサポートすることができます。

いざという時にしっかりと対応がとれるように正しい知識を習得し、それを元に関係各所との連携を図っていきましょう。

在宅ターミナルケアにおける介護士の役割④エンゼルケア

エンゼルケアを行うことが認められている事業所に勤務する介護士や看護師は、立ち会ったクライアントの死後のケアを担当することもあります。

具体的なエンゼルケアとしては、ご遺体の腐敗防止を目的としたご遺体の冷却がありますが、なによりも大切になってくるのはクライアントの尊厳を守り、家族の気持ちに寄り添うことです。

改めてこれまで担当してきたクライアントを尊重する気持ちでエンゼルケアにあたりましょう。

自宅でのターミナルケア。介護士の役割はクライアントと家族への寄り添い

在宅でのターミナルケアにおいて介護士がどのような役割を担っているのかについてご紹介いたしました。

人は誰しもいつかは死に向かい合うことになりますが、不安や恐怖心を感じない人はいません。

ターミナルケアを担当する介護士としてはクライアントや家族の感情を受け止め、寄り添いの気持ちをもって介護サービスを提供していくことが非常に重要です。

改めて介護士の役割を見つめなおし、質の高いターミナルケアの提供を目指しましょう。

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