訪問介護が提供するターミナルケア。旅立ちを控えた「よりよい生き方」とは

訪問介護を利用したいと希望するクライアントのなかには、残された時間を思い出のつまった自宅で過ごしたいと感じている方もいらっしゃいます。

一人ひとりの意思の多様性を尊重する介護保険制度においてクライアントの望む自宅で迎える旅立ちをサポートしていくことは、非常に社会的に意義のあるサービスのひとつですが、まだまだ死を意識したことのないアテンダントのなかにはサービスを提供することに対して漠然とした不安を感じてしまうことも多いと思います。

そこで今回は訪問介護でアテンダントとして従事していらっしゃる方や、訪問介護への就職・転職を希望される方に対して、訪問介護の提供するターミナルケアの特徴をご説明していきます。

介護業界で働くなかで必ず向き合う必要が出てくるターミナルケアや旅立ちのサポートに対して、正しい知識を学んで理解しておきましょう。

目次

ターミナルケアとは

ターミナルケアは、認知症や脳梗塞、がんなどの病気に起因して、余命がわずかと宣告されたクライアントに対して提供される医療的・看護的・介護的ケアを意味する言葉です。

ターミナル期に対する明確な定義はありませんが、一般的には病気からの完全回復が見込めなくなってしまい積極的な治療が行えなくなった時や、寝たきりで食事がとれなくなった時などを目安に宣告する医師が多いとされています。

ターミナルケアではこのような状態のクライアントに対して、残りの余命を少しでも心穏やかに送ることができるようにサービスの提供を行います。

病気の症状改善を目的とした医療的なケアは行わず、クライアントの抱える痛みや不安、ストレスを緩和すること、クライアントのQOL(生活の質)を可能な範囲で保つことを目的としています。

訪問介護の提供するターミナルケア

特に訪問介護が提供するターミナルケアを利用するクライアントの多くは、病院や入所先の施設から戻ってきた方々が中心です。

「最期は住み慣れた自宅から送り出されたい」「自宅で家族との思い出に包まれながらその時を迎えたい」と考えるクライアントからの要望を受けて、医療や看護、ケアマネージャーと連携しながら、どのようなターミナルケアを提供することができるのか、どのようなターミナルケアがクライアントや家族のためになるのかを相談し、訪問介護の制度内で提供していきます。

訪問介護のターミナルケアで大切な心のケア

ターミナル期を迎えたクライアントは、身体や心に痛みを感じてしまい、ネガティブで後ろ向きな気持ちになってしまっている方も珍しくありません。

そこで訪問介護のターミナルケアでは、クライアントや家族の不安や痛みを取り除き、ポジティブな気持ちで日々を充実させていくお手伝いをしていきましょう。

訪問介護のターミナルケアで大切なサービス①メンタル面のケア

病院から帰宅したばかりのクライアントの場合、「がんばったけれど病気が治らなかった」「病院から見捨てられてしまった」「どうせあと数カ月で死んでしまうんだ」というように、投げやりな気持ちを抱いていることも珍しくありません。

また「医療施設のない自宅で苦しみながら死ぬことになったらどうしよう」「死ぬまでに耐え難い痛みが襲ってくるかもしれない」というように、死に対する恐怖心に思考が支配されている方もいらっしゃいます。

訪問介護ではそのようなネガティブな気持ちにも寄り添いつつ、24時間365日のサービス提供体制や不安を和らげる介護サービスや対話の提供を通して、クライアントに前向きな気持ちになってもらうことが大切です。

訪問介護のターミナルケアで大切なサービス②家族への説明

クライアントの意向を汲み取ってターミナル期を自宅で過ごしてもらうことに同意した家族も、クライアントと同様に最期の時に対しての不安を感じていらっしゃいます。

そのため緊急時の連絡手順やいざという時の処置といった流れを確認する場を何度か設けると同時に、「これから最期の時に向かって、どのように症状が進行いていくのか」という疑問に対する丁寧な説明や、長期間の介護生活で疲れを感じているメンタルに寄り添いながら、家族をも支えていく必要があります。

訪問介護のターミナルケアで大切なサービス③訪問看護との連携

医療面での設備がない自宅では、主に訪問看護と連携しながらターミナルケアを提供していくことになります。

そのためクライアントが利用している訪問看護とは積極的に連絡をとり、痛みや諸症状の共有と、介護中に見受けられた容態の変化などを共有しておく必要があります。

特に旅立ちに関しては訪問介護と訪問看護のどちらが主導権をもって対応していくのかなどについても事前に確認を行い、手順や流れの確認を改めて行っておきましょう。

ターミナル期の訪問介護

訪問介護は制度上、1日3回まで利用することが可能です。

しかしながらターミナル期において訪問介護を上限まで利用しつつ、訪問看護をはじめとする諸サービスも併用していると、支給上限を超えた利用につながるかもしれないという懸念が生じます。

特にターミナル期の長さに関しては誰にも推察することができませんので、自宅生活が長引くにつれて想定外の出費が続いてしまったり、終わりのこない介護に家族がいらだちを感じてしまうことも珍しくありません。

訪問介護のアテンダントとしては事業所やケアマネージャーと情報を交換し、連携を図っていくことで、ターミナル期のクライアントや家族の不安を取り除いていきましょう。

自宅で最期を迎えられるのは、幸せなこと。訪問介護の提供するターミナルケアで、穏やかなひと時を

昭和以前は病院や介護施設以外で死を迎えるということに対するハードルは非常に高かったですが、介護保険制度や地域密着型サービスなどの仕組みが整備されて以降、クライアントの意思を尊重したターミナルケアが可能となりました。

多様化する旅立ちの形において、訪問介護ではクライアントや家族に寄り添いながら、画一的ではなく、一人ひとりにとっての「より良い生き方」を追求する介護サービスの提供が求められています。

特に今回ご紹介したような心のケアを最優先として行いながら、丁寧なターミナルケアの提供を行っていきましょう。

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