介護が必要になったとき、初めて利用する介護サービスとして需要が高いのが訪問介護サービスです。
訪問介護は、クライアントが自宅で生活を送るなかで困っていることやサポートを必要としていることに対して、訪問介護員(通称ホームヘルパー)が自宅を訪問して介護サービスを提供することが求められています。
実際に訪問介護で提供される具体的なサービス内容はどのようになっているのでしょうか。
今回の記事では、訪問介護で働いてみたいと考えている方はもちろんのこと、家族の訪問介護利用を検討中の方にも分かりやすいように、訪問介護サービス内容を一覧でご紹介してまいります。
訪問介護の基本
訪問介護は介護保険制度に基づく、訪問型の介護サービスです。
そのため訪問介護を利用することが認められているのは、自治体による介護度認定で要介護1〜5に該当すると認定された方に限ります。
介護度によって定められた支給限度までであれば、少ない自己負担(基本的には1割負担、現役並みの所得がある方は2割〜3割負担)で利用することが可能です。
訪問介護を提供することができるアテンダント
訪問介護を提供することができるのは、介護に対する正しい知識をもったアテンダントに限られます。
具体的には以下の資格を取得しているアテンダントのみが提供可能なサービスです。
- 介護職員初任者研修
- 介護福祉士実務者研修
- 介護福祉士
訪問介護で提供可能なサービス
訪問介護で提供されるサービスは、クライアントの身体に触れる「身体介護」と、クライアントの身の回りのことを代行する「生活援助」の大きく2つに分類されます。
より詳細に、訪問介護サービス内容の一覧を確認していきましょう。
訪問介護サービス内容:身体介護
身体介護では、クライアントの自立支援を目的として、一人ひとりのクライアントが必要としているサービスを提供します。
自分でできることは自分で、が基本となってきますので、それぞれのクライアントによって利用するサービスは異なります。
- 食事の介助:食事を口に運んだり、正しく嚥下されているかを見守る
- 入浴の介助:浴室や着替えの準備も含め、洗髪・洗身・清拭など、必要に応じた入浴の支援を行う
- 排泄の介助:トイレの介助はもちろんのこと、クライアントの状態によってはおむつ交換や着脱、始末などを行う
- 移乗・移動介助:一人での歩行や椅子への座り立ちなどが難しいクライアントに対して、歩行のサポートや、車いすでの移動介助、移乗介助を行う
- 更衣の介助:着替えのサポート
- 服薬の介助:それぞれの常用薬の種類と服薬のタイミングを把握して服薬の支援を行ったり、必要に応じて服薬記録をつける
- 体位変換:寝たきりでありながら自力で体の向きを変えられないクライアントに対して、血行障害や床ずれを予防する目的で、枕・タオル・クッションなどを使って寝返りの介助を行う
通院等乗降介助
訪問介護の特徴的な身体介助サービスの1つに、通院等乗降介助があります。
これは外出介助の一種で、通院やその他生活に必要な外出を行う際に、車両への乗り降りをサポートします。
訪問介護サービス内容:生活援助
生活援助は、クライアントの身体に直接触れることなく、日常生活において必要な身の回りのことをサポートするためのサービスです。
クライアントが独居もしくは高齢の夫婦のみの世帯である場合や、家族と同居していても何らかの理由でサポートが受けられない場合などに需要があります。
- 食事の準備:食事調理・配膳・片付けなど、食事にまつわるサポート
- 掃除:クライアントが日常的に使用するリビングや居室・浴槽・トイレなどの掃除とゴミ出し
- 洗濯:クライアントの衣服を洗濯するだけでなく、干す・畳むといった一連の流れをサポート
- 買い物代行:生活必需品や食料などの買い物に代わりに行く
- 薬の受け取り:外出が困難なクライアントに代わり、薬の受け取りを代行
訪問介護サービス内容で認められていないこと
ここでは、訪問介護サービスでは提供できない内容を一覧でご紹介します。
同居する家族に対するサービスの提供
訪問介護サービスは、介護保険制度に基づいて行われる要介護クライアントの自立支援です。
そのためクライアント以外の方、具体的には同居する家族に対するサービスの提供はできません。
混同されやすい具体例としては、同居する家族のものも含めた洗濯や調理、クライアントが生活において利用しない部屋の掃除、クライアントが使用する以外の生活必需品の買い出しや薬の受け取りなどです。
どんなにクライアントに対する訪問介護サービス提供のついでであったとしても、訪問介護は家事代行サービスとは異なりますので、クライアントの家族に対するサービスの提供は介護保険制度上認められません。
医療行為
訪問介護を担当するアテンダントは介護に対する正しい知識を有している方に限られますが、医療従事者としての資格保持は必須ではありません。
そのため医療行為に該当する以下の一覧のようなサービスを提供することはできませんので、しっかりと把握しておきましょう。
- 摘便
- インスリン注射
- 喀痰吸引
- 床ずれの処置
- 点滴の管理
- 人工呼吸器をはじめとする医療デバイスの管理・操作
- 経管栄養の管理
訪問介護の2時間ルール
訪問介護には、通称2時間ルールと呼ばれる規定が存在します。
「それぞれの支援の間に2時間の空白時間を設けて提供しなければならない」というルールです。例えば朝8時に排泄介助でおむつを交換した場合、次におむつの交換をお願いできるのは午前11時頃ということになります。
もし2時間の空白時間が設けられていない場合、それは1回のサービスとして扱われます。この2時間ルールは、主に「介護報酬」のために存在しています。
細切れに介護サービスを利用したい場合は訪問介護ではなく、定期巡回・随時訪問対応型訪問介護看護などへの利用切り替えを検討しましょう。
訪問介護サービスの内容一覧を確認して、より質の高い介護サービスを
訪問介護サービスの内容を、一覧としてご紹介させていただきました。
訪問介護は自宅で自分らしく暮らし続けたいと願うクライアントに対して、介護サービスの提供を通して自立を支援します。
介護保険制度に基づいてサービスを提供していますので、家事代行などとは異なり、クライアントの生活に直結する部分に対してのサポートが可能です。
サービスの提供・利用にあたっては訪問介護サービス内容の一覧をよく確認してくださいね。