日本人の死因第一位である、がん。
感染性の病気ではないものの身体のなかからがん細胞を完全に取り除くことは難しく、多くの方が一度はがんに罹患したり、がんの進行によって悩んでいたりします。
がんはステージⅠ~Ⅳまでの4段階に分類されますが、ステージⅣと診断されるレベルにまで症状が進行し、さらに「これ以上の治療法がない」「これ以上治療を続けることは体力を奪い、寿命を縮める」と判断されると、「末期がん」の診断がおります。
今回の記事では末期がんと宣告された終末期のクライアントが在宅での介護を希望する際、どのような介護サービスを利用することができるのかについて紹介していきます。
末期がんの特徴
がんはその進行度合いによって、4つの段階に区分されています。
がんのステージの判定は、T(がんの広がりの範囲)・N(リンパ節への転移の有無)・M(他の臓器への転移の有無)という3つの要素(TNM分類)によって以下のように分類されます。
- ステージⅠ:がん腫瘍が少しずつ広がりつつあるものの、筋肉層でとどまっている段階
- ステージⅡ:リンパ節には転移していない、もしくはわずかなの転移がみられ、がん腫瘍がステージⅠよりもさらに広がっている段階
- ステージⅢ:がん腫瘍の転移がリンパ節に認められる段階
- ステージⅣ:がん腫瘍がはじめにできた部分を超えて、他の器官へも転移している段階
がんの治療においては、それぞれのステージごとに手術療法・抗がん剤治療・放射線療法・免疫療法といった治療を行うことで、がん腫瘍の根絶を目指します。
しかしながら現代の治療法ではがん腫瘍を取り除くことができなかった場合、つまり治療の術がなくなった段階が末期がんの目安です。
末期がんと診断されると、医師から余命の目途が示されます。
余命宣告を受けて終末期を過ごす方法としては、以下のような場所が挙げられます。
- 療養型病院(緩和ケア病棟やホスピスなど)
- 介護施設
- 自宅
このような選択肢のなかで、クライアントと家族の意向を照らし合わせることによって終末期の過ごし方を決定していきます。
末期がんで終末期を自宅で過ごす
末期がんとして余命宣告を受けた後、終末期を過ごす場所の候補として、自宅が挙げられます。
住み慣れた自宅はクライアントが最も心穏やかに過ごすことのできる場所であり、家族とともに終末期を過ごすことで、クライアントにとっても安らぎのひと時となります。
自宅で終末期を過ごすことにおいて、がんによる全身の痛みの緩和ケアを不安に感じる方もいらっしゃいますが、鎮静剤の投与は在宅看取りの場合でも問題なく利用することが可能です。
終末期医療に関しては医療保険制度の適用となり、例えば後期高齢者医療制度の適用となる75歳以上のクライアントは、現役並みの所得がある方を除いて2割の自己負担でサービスを利用することが可能です。
高額療養費制度も適用となりますので、原則として70歳以上のクライアントは自己負担の上限である1カ月あたり57,600円の範囲内で終末期医療を利用することが可能です。
在宅で看取る場合の介護サービス
また医療保険に加えて、終末期のクライアントを在宅で看取ることを希望する際は、介護保険制度を利用することができます。
介護保険制度は原則として65歳以上のクライアントが利用対象ですが、末期がんのクライアントであれば40歳から利用することが可能です。
末期がんのクライアントの場合は訪問介護を中心に利用し、主に身体介護のサービスによるサポートを希望されている方が多くなっています。
末期がんの終末期における、訪問介護の役割
末期がんと診断されたクライアントは、多くの場合余命を宣告されており、残された時を家族と過ごそうとしている状態です。
がんの治療を目的とした医療行為を必要としてるわけではなく、痛みを和らげるための緩和ケアを中心に医療サービスを利用しています。
特に自宅で過ごす末期がんのクライアントとその家族が、後悔なく終末期を自宅過ごすことができるように介護サービスを提供していくのが、訪問介護の役割です。
身体介護
末期がんのクライアントは比較的日常動作の自立度が高いとされていますが、訪問介護では一人ひとりの状態に合わせて排泄・清拭・食事の介助や、体位変換のサポートなどを行います。
家族や本人の希望を尊重しながら、ケアプランで認定された範囲内でサービス提供を行っていくことで、家族への過度な負担集中を防ぎ、穏やかな旅立ちを迎えられるようにサポートしていきます。
関係各所との連携
終末期の末期がんであるクライアントを在宅で看取る上では、家族と訪問介護のサポートに加え、終末期医療を提供する訪問看護や訪問診療といった医療的なサポートを欠かすことができません。
訪問介護のアテンダントは関係各所とワンチームとなってクライアントと家族を支える体制を築き、クライアントの容態変化などを共有することが求められます。
特に訪問介護のアテンダントが気付きやすいポイントとしては、排泄量の減少や水分を含めた食欲の不振、せん妄や意識混濁、床ずれなどが挙げられます。
これらの情報を訪問看護をはじめとする各所に共有することで、より質の高い在宅看取りの提供につなげていくことができますので、必要に応じてケアプランや提供している介護サービスの内容を見直し、状況に合わせた対応を行っていきます。
家族からの相談
クライアントの旅立ちが近づくなかで、不安を感じていたり、「本当にこのまま自宅で看取ってよいのだろうか」と悩んだりする家族も多くいらっしゃいます。
訪問介護では家族の揺れ動く気持ちに寄り添い、今後の看取り方針に変更が生じる場合は各所に連絡を図っていきます。
在宅での看取りを希望する、末期がんのクライアントの終末期に寄り添う介護を
末期がんと呼ばれる状態について、そして終末期のクライアントが在宅での看取りを希望されている場合に訪問介護が提供すべきサービスについてご紹介いたしました。
末期がんと診断され、自宅で最期の団らんの時を過ごしているクライアントと家族にとって、医療の力以外にも必要なサポートが、訪問介護です。
株式会社土屋グループでは終末期を迎えた末期がんのクライアントからの相談にも真摯に対応し、在宅での介護のお手伝いをしてまいります。