定期巡回サービス土屋 白石:千葉香織(管理者)

人の数だけ、想いがある。人の数だけ、答えがある。
人の数だけ、想いがある。人の数だけ、答えがある。
定期巡回は、一人ひとりの状況に合わせた支援ができるサービスです。
随時コールで呼んでも2時間、3時間と来てくれないところもある。土屋さんの事業所は、定期巡回の本来の姿だね。
札幌市には定期巡回は結構あるんですけど、ちょっと独特なんです。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や有料老人ホームなどに併設されていて、基本的にはその中にしか行かないところがほとんどです。
サ高住は一応、個人扱いで、在宅生活になるんですけど、実態は施設と変わらない感じなので、施設の皆さんの部屋を回る形になります。
私たちの事業所の開設当初は、外部に行く定期巡回が2、3カ所しかなかったと聞いています。
白石区では今でもサ高住がメインで、外部に行くとしても1~2件のようです。
それに随時でコールが来ても、サ高住で入浴等の対応があったら、それを終えてから行くので、外部に行くまでにすごく時間がかかって、呼んでもなかなか来てくれないのが当たり前みたいな感じらしいんです。
それに、要介護度1だと週に1回、要介護度2だったら週2回といった形で、事業者側から回数を提示されてしまうみたいなんです。
でも私たちは要介護度1の方でも、必要であれば1日3回行きますし、要望があれば毎日行くことができます。
日勤帯では数名が動いているので、随時のコールがあった時は連絡を取り合って「私が近いから行けるよ」といった形で、20~30分以内で行けるようには心がけています。
担当者会議の際に、ドクターから「他の事業者だと1日の訪問回数に制限があったり、随時で呼んでも2時間、3時間と来てくれないところがあるのに、土屋さんは定期巡回の本来の姿だね」と仰っていただけて、私たちも「なぜ定期巡回なのか」というのを忘れずに仕事に取り組んでいきたいと思っています。
逆に安いんじゃないかな?
ご家族が遠方にいらっしゃって、「親に何かあっても対応できないから」と、私たちに依頼されるケースもよくあります。
たとえば、いつもは夕方にお電話で「お薬飲めましたか?」と、確認の連絡をしているクライアントがいるんですが、ある時、電話をかけてもつながらなくて、そのまま自宅に伺ったんです。
すると車が見当たらなくて、「どこかに行ってしまったの?」と慌てました。
認知症がある方なんですけど、まだ運転免許証を持っていらっしゃったので。
息子さんも遠方に住んでいらっしゃって、すぐに来ていただくこともできないので、とにかく息子さんにお電話して、警察に連絡していただいたんですが、そこからの対応はすべて私たちがさせていただきました。
「こんな感じの方です」「連絡が取れなくなったのは、〇時からです」というように。
正直、これは介護保険上グレーなところかとは思いますが、まずは危険を回避しなければいけないので…
結局、クライアントは翌朝、札幌から車で2時間ぐらいの路上で保護されました。
ガス欠で止まっていたようです。春過ぎぐらいだったので、まだ良かったのですが。
息子さんには、「最初は高いなって思っていたけど、毎日来てくれて、随時でも呼べるし、何かあったときに自分がすぐに駆け付けられる状況にない中で、定期巡回の方がすぐ駆けつけてくれることを思うと、逆に安いんじゃないかな」と仰っていただけました。
命をつないでくれて、ありがとう
危険を回避するために動くといったことは、定期巡回では時折あります。
たとえば、奥さまとお二人で暮らされていたクライアントがいらっしゃったんですが、以前は奥さまがその方の介護されていたんです。
ただ、奥さまが圧迫骨折で入院することになって、遠方に住まわれている息子さんが来てはくれたんですが、お仕事の関係で日中は家に誰もいない状況になったんですね。
それで私たちがご自宅に支援に行くようになりました。
その後、奥さまは戻って来られたんですが、要支援の認定を受けられたこともあり、そのまま私たちがサービス提供を続けていました。
けれどある日、訪問時に奥さまが倒れられていたんです。
呼びかけにも応答がなく、ケアマネさんと連絡を取りながら、すぐに救急隊員を呼んで搬送してもらいました。
クライアントは認知症もあって、奥さんが倒れているのにも全く気付かず、私たちが伺った時には、「ほら、お母さん、起きなさいよ」という感じだったんです。
奥さまは「自分でできるから」という思いが強い方だったので、奥さま自身への介入は、どのサービスも何もなかったんです。
その中で私たちが定期的に伺い、異変を見つけてすぐに対応できたことで、息子さんからは「命つないでくれて、ありがとうございます」と仰っていただけました。
介護保険上、正解かどうかは実際分からないんですが、定期巡回がなかったら助からなかった命だとは思います。
今日は誰が来てくれるんだろうって、楽しみの一つになっている
直接的にご家族の命をつなぐということもありましたが、ご家族の負担を減らせるケースも定期巡回では多いです。
現在、息子さんと同居されている方の支援に入っていますが、もともとそのクライアントはガン末期で余命宣告を受けていた方なんです。
体重も落ちてきて、「あと半年くらいです」と宣告されて、それで私たちが支援に入ることになったんですが、それまでは息子さんが仕事をしながらお父さまを看ていらしたんです。
もちろん訪看さんにも入ってもらってはいたようですが。
ただ、そこからちょうど半年が経った頃に、クライアントの血液検査のデータに改善が見られて、ガン末期から外れたんですね。
それでご本人も徐々に元気になってきて、それはとても喜ばしいことなんですが、息子さんはお仕事もあり、それまでの介護疲れもあって「元気になってきたし、自分でできるんだったら自分でしてほしい」という思いも強くなってきたのか、あまり父親に関与せずに、クライアントご本人が自分で料理もする形になったんです。
けれど、やはり体力的に限界があるというところで、私たちもケアマネに相談して、食事の支度ができるようなプランに変更していただきました。
それまでは1日1回の訪問で、お部屋の掃除が主でしたが、今はお野菜を切るといった下準備や調理が増えてきて、クライアントからも「こういうものを食べたい」と、“欲”が出始めたのを感じています。
最近、訪問時にご自身の状態や困っていることなどを伺った際に、
「息子にはあまり頼れないけど、毎日ヘルパーさんが来てくれるおかげで困ることなく生活ができている」
「ヘルパーさんがいなかったら今頃生活できてなかったな」
「最近は『今日は誰が来てくれるんだろう』って、楽しみの一つになっている」
とお話ししてくださいました。
支援に入った当初より活気が見られていて、息子さんに頼れない分を私たちに頼ることでご本人も落ち着かれ、息子さんの介護負担軽減にもなっていると感じています。
「声が聞きたい」、それだけでも大丈夫です。定期巡回はいつも安心をお届けします。
定期巡回は24時間訪問できるサービスですが、中には、お電話だけの方もいらっしゃいますし、週に数回訪問して、それ以外はお電話という方もいらっしゃいます。
たとえば、ご自身が薬を飲んだかどうかを忘れてしまうクライアントがいらっしゃったんですが、私たちが支援する前は訪問介護と訪問看護が入っていました。
その時分は頻繁に、「今日は薬を飲んだ?」と事業所に電話を掛けられていたようです。
お薬を1週間カレンダーにセットしておいても、日付がわからなくなってしまって、1日で2~3日分の薬を飲んでしまったり、逆に飲み忘れてしまったりでパニックになられて、「来てくれないと分からないから、どうにかしてくれ」と、事業所に電話を掛けることが続いていたということです。
ただ訪問介護などでは随時対応が難しいので、定期巡回にご相談が来て、私たちがサービスに入ることになりました。
そこからは毎日定期的にお電話でお薬の確認をして、電話がかかってきた際もしっかり説明していたら、しばらくすると「どうしていいかわからない、来てくれ」といったことはなくなっていったんですね。
不安が軽減されたことで落ち着かれたと思いますが、こういった形でも、「声が聞きたい」だけでも、お電話での対応を受け付けています。
定期巡回は不安軽減として活用していただくこともできるんです。
こんな愚痴、娘には話せないけど、ヘルパーさんが聞いてくれるだけでほっとする
娘さんが遠方に住まわれているクライアント宅に支援に入っているんですが、すごくお話し好きな女性の方なんです。
支援開始から1週間ほど経った時に、
「今までは娘に来てもらわなきゃいけなかったけど、ヘルパーさんが毎日のように来てくれるから、娘にも負担を掛けずに済むようになって良かった」
「みんな親切にいろいろやってくれて助かっている。家で暮らせるのはヘルパーさんのおかげです」
といった言葉をいただくようになりました。
他にも、「娘にやってもらうと色々気になって文句も言ってしまうから、ヘルパーさんのおかげで娘と喧嘩しなくなって良かった」とも仰られていました。
なんでも娘さんが、クライアントご本人に確認せずに物をしまったりとかなさるようで、「でも、それを言ったら喧嘩になるから、もう言うのを諦めてる」とのことでした。
「自分の面倒を見てもらっている以上、仕方ない」という感じで。
とはいえ、なかなかうっぷんが溜まってらして、「こんなことがあって、こう言ってやりたかったけど、言わないで我慢したんだよね」といったことを結構私たちにお話しされるんですね。
多分、クライアントと娘さんの性格が正反対なのでぶつかっているとは思うんですが、私たちが介在することで、親子間の距離も一定に保たれるようになって、関係性も崩れることなく生活できているように感じます。
それで、「こんな愚痴、娘には話せないけど、聞いてくれるだけでほっとする」ということを仰ってくださったんですが、人に話すことでご本人もストレスを溜めることなく過ごすことができて、かつご本人は話し方も面白くて、私たちも聞いていてほっこりします。
「こんなことがあってね」と、おばちゃん特有の、バシバシ叩いてこられて、私たちも「痛い、痛い」となったりすることもありますが (笑)、いい関係性ではないかなと感じています。
自分がいない時だけ、どうにかつなげてほしい。そうすれば親を施設に入れないで、自宅で過ごしてもらうことができるから
以前、独居のクライアントがいらしたんですが、近くに住まわれている娘さんと息子さんが、「やはり心配なので」と、交代で夜だけ泊まりに来ておられたんです。
ただ、日中もポータブルトイレの使用などで呼び出されることが増えてきて、ご家族さんも仕事中ということもあり、大変になってきていたんですね。
ただ、そうした負担軽減のために施設に入ってもらうというのには、ご家族さんも躊躇されていて、「なんとか自宅で過ごさせてあげたい」という思いがあったようで、ケアマネさんに随時訪問のできる定期巡回を紹介されたみたいです。
ご本人は、排便ということもあり時間も定かではないので、最初は「そこまでやってくれるのかな。やってみてダメだったら、施設も考えようかな」という感じだったようですが、私たちが「随時コールを下されば、だいたい20~30分ぐらいで行きますよ」とお伝えしたところ、排便を待ってくださることもあったり、ちょっと早目に呼んでくれるようにもなったんですね。
そうした形で私たちが対応することで、ご家族にも電話されることが減って、ご家族の負担も軽減されたので、「これだと自宅で生活できるね」と、施設に入ることなく、ご自宅で過ごせるようになりました。
クライアントはその後、ご逝去されたのですが、その直前までご自宅で生活することができていて、ご家族の希望も叶えられたことに安堵しています。