定期巡回サービス土屋 白石:千葉香織(管理者)

人の数だけ、想いがある。人の数だけ、答えがある。
人の数だけ、想いがある。人の数だけ、答えがある。
定期巡回は、一人ひとりの状況に合わせた支援ができるサービスです。

「家にいたい」という父の願いを叶えるために
2025年の冬、あるクライアントがご逝去されました。
最期まで「家がいい」と望まれていた方で、後日ご焼香に伺いました。
案内してくれたのは、娘さんです。
私たちがその方の支援に入ったのは、娘さんの希望でもありました。
娘さんはずっとお父さまを看ていらして、お父さまの体調に合わせて仕事を休んだりもされていたようです。
けれど次第にお食事もほぼ摂取できなくなってきて、水分もスプーンで二口、三口という状態になり、周囲からは点滴なども含めて入院を勧められたこともあったようです。
「少しでも長生きしてほしい」という娘さんの思いに、訪看さんらが応えたアドバイスだったと思うのですが、入院すると「もうそこから帰って来れないんじゃないかな」という不安が娘さんには大きかったようで、「やっぱり入院はさせたくない。お家で看たい」と思われたと伺っています。
それは、クライアントご本人が「家にいたい」という思いが強くあったからだと思います。
まだターミナルの状態ではなかったときも、デイサービスにも行きたがらずに「家がいい」と仰っていたようで、そういうご本人の思いもご存じだったので、体調が悪くなったから病院に行くというのは本人も望んでいないと、娘さんは思われたんではないでしょうか。
ターミナルケアの中で
ご家族が看取りをするのは大変です。特に娘さんは働かれていて、常にお父さまの傍にはいられないこともありますし、やはりご本人を看ながら仕事を続けていくのは難しいこともあると思います。
訪看さんも週に2回入ってくれていたと伺っていますが、転倒が増えてきて、動作1つ1つに対して時間がかかることもあり、決められた時間内でケアを行う訪問系の介護サービスでは在宅生活の継続が難しいということだったようです。
それにデイサービスにも行きたがらない状況では、やはり随時訪問できる定期巡回が合っているということで、私たちがターミナル(看取り)支援に入ることになりました。
支援に入ってからは、基本的には朝・昼・晩に3回訪問し、トイレ誘導や整容などのケアを中心にしていました。
その他、夜中に排便があったり、娘さんが気になったことがあれば、その都度ご連絡をいただいて、随時訪問していました。
娘さんは仕事がお休みの日には、ご自身でケアをされていましたが、徐々にお父さまの状態も悪くなってきて、寝たきりになったころには、清拭やオムツ交換も一人では大変ということで、私たちも介入するようになりました。
娘さんとはノートなどでもこまめにやり取りをしていましたが、訪問した際には、娘さんから、
「こういう時ってどうしたらいいのかわからない」
「急に『オムツで排泄して』と言ってもなかなかできない。
でもここでトイレに連れていくと、自分がいないときにも行こうとして転んじゃったりするから、どうしたらいいんだろう」
「こういう水分をあげたいんだけど、飲みやすくするためにどうしたらいいんだろう」
といったご相談をいただくこともよくありました。そういう際には、私たちもご提案をしたり、細かい話し合いもさせていただいていました。
クライアントご本人はそれほど口数の多い方ではなかったので、意思疎通という形でお話しをしていましたが、それでも時々ぼそっと冗談を言われることがあったんです。
それを娘さんにお伝えした時に、「え?うちの父がそんな冗談を言うんですか?」と、父親の知らない一面を知ることができたと喜ばれていたこともありました。
ただ、後半の方になってくると認知面の低下も見られて、私たちを娘さんと勘違いされることもあったので、オムツ交換や、こまめな清拭・更衣といったケアの部分を主にさせていただくようになりました。
亡くなる2、3週間くらい前からは、お食事も1口、2口というところもあったので。
在宅生活を望むクライアントと、それを叶えたいと思うご家族。私たちはそのために何ができるのか
支援自体は3か月という短い時間でしたが、ご焼香に伺った際、娘さんから「皆さんのおかげで休むことなく安心して仕事に行くことができました。お父さんが亡くなったら、皆さんとのやり取りがなくなって寂しい。大変なお仕事だけど、これからも頑張ってください。本当にありがとうございました」というお言葉をいただきました。
私たちが毎日、複数回入ることで、娘さんが仕事をお休みすることなく安心して働けたり、「何かあってもすぐ連絡がもらえるという安心感があった」と伺えて、私たちも安堵しています。
それに娘さんとは細かい相談もよくしていたので、「不安な気持ちを少しでも解消できていました」とも仰っていただけたことはありがたく、今もとても励みになっています。
そしてなにより、「皆さんのお陰で、お父さんが自宅で最期を過ごすことができて良かったです。ちゃんとお家で見届けてあげることができて良かった」とのお言葉をいただいて、自分たちが支援に関わることで、ご家族の気持ちの整理の面でも意味があったと感じています。